東優『遺産相続』を紹介2010/10/07

 中日新聞朝刊市民版「みんなの本」から。
 いざというとき困らない遺産相続、成年後見も解説と見出しに大きく紹介された。著者の東さんは名古屋駅付近に事務所を構えて活躍中の若手行政書士である。9/25に行われた愛知県行政書士会の相続の研修のテキストにも使用された。講師はもちろん東さんである。

 -親族の死は突然やってくる。そして相続の手続きのあと「もっとこうしておけば」の言葉のなんと多いことか-と記事は書き出す。-大切な親族をもめさせないためにも、相続の問題は事前に解決しておきたい-としめくくる。

 まったくそのとおりで8月9月に相次いで発刊された週刊誌でもある医師が死ぬ直前になって患者がもっとも後悔することの一つに遺言書を残しておけばよかった、という調査報告があった。

 ついこの間も前勤務先の創業者の令息に行政書士開業のあいさつをかねて営業に行った。行政書士の仕事の紹介に終始してしまった。成年後見の話をしてみたが余り乗り気ではなかった。
 今日は午後からやはり愛知県行政書士会の研修で「事業承継」をテーマに講義を聴くことになっている。80歳になんなんとする高齢の創業者からの継承はすでに遅い気もするが再び話をしてみたい。あるいは用心深い人だからもう手は打ってあると思いたい。それならいいが・・・。

 古い中国の俚諺に旅人が泊めてもらったお礼にこの家は火事になったら危ないと忠告したらかえって嫌われた。実際に火事になって焼け出されてもう一人の旅人に助けられた。家人は助けてくれた方の旅人にお礼をしたという。

 やらねばならない大切なことと分かってはいるが他人から忠告されたくもない心情は分かる。会社経営も同じである。中小企業の経営者にとって会社はイコール自分の財布なのだ。もっとも知られたくないことである。困難に直面しないと動けないのだ。これは法律の問題ではなく心理学でもある。

 遺言書を書くこと、元気なうちから成年後見契約を結ぶことは「転ばぬ先の杖」=知性である。そのことは言っておいてもいい。

もう一つ気になった記事は「生活」面の「お金の話」から

金融ADRスタートの見出し。裁判を通さずに法的なトラブルを解決することと解説。紛争解決は行政書士には縁がないと思っていたが愛知会でも取り組んでいる。行政書士の仕事は限りなく弁護士に近づいてきたなという気がした。

事業承継について2010/10/07

 豊田支部の研修に参加のため午後から豊田市産業文化センターへ行く。講師は井藤真生先生。愛知会で半年かけて研究された成果である。
 行政書士の仕事として「事業承継」をいかになすべきかというテーマで急ぎ足で語られた。大変煩雑で総合的な力量が必要である。リスクも高い。
 弁護士は法律に詳しいが経営は分からない、税理士は簿記会計や税に詳しいが法律や許認可には弱い、司法書士は登記のようにすでに決まったことを申請する関係の法律に詳しいがやはり経営が分からない、とそれぞれに単独では取り組めない難しさがある。基本的に士業には経営は分からないだろう。
 創業者と後継者の両方から信頼を得ないとそもそも依頼がない。窓口はコンサルティング的な許認可を通じて経営者と密着度が高い行政書士が担うといいように思うが・・・。
 事例研究に学ぶことは段取りのよさである。中小企業庁の申請内容を見るとまさに行政書士の仕事だ。何も知らずに依頼を受けた税理士は申請したら中小企業庁が受け付けなかったというエピソードも披露された。
 行政が事業承継を法律で支援することは中小企業が日本経済の要だからだ。法律に不案内な経営者一族が相続がこじれて倒産や廃業に追い込まれては経済の衰退を招くからである。お金持ちが多いからまだ危機感は伝わらない。カネさえ持っておれば・・・と考えている創業者が多いのではないか。特に名古屋は。
 雇用問題は一に中小企業の発展にかかっていると思っていい。元気になって下さい、ということだ。
 かつて東海銀行に勤めていた友人の話では事業は二代目で固まるとも言われた。確かに中小企業の経営者の御曹司は東海銀行に入ったり、商社に入って修行をしたものだ。そこで得た人脈が社長を継承した際に将来の幹部招聘となることもあろう。うまく回っていた。
 実際にそんな人を知っている。大学卒業後東海銀行入行、親の事業継承、そして今は息子さんに譲り会長におさまる。息子さんはIBMの社員だったそうだ。IBMは発展、拡大そしてリストラ縮小均衡を経てきた会社だ。大企業の考えが小さな会社で役に立つかどうか見守りたい。
 しかし今はどうか。東海は行名が消えた。ある東海のOBは今はもう銀行員だなんて自己紹介で言えないという。それくらい銀行の信用は地に落ちた。とても将来の経営者修業にはならない。
 一般企業の方が修業になるだろう。今もっとも辞めたい仕事は社長業とどこかで読んだ。そんな話も聞く。
 この前も営業に行った先で君は自由に生きられてうらやましい、と言われた。人生の価値は自分本位に生きることだ。カネや地位よりも大切なこと。しかもこういう言葉を受けるのは初めてではない。30年前にも建築会社を起業した社長にも言われたし、ある資産家の息子さんにも言われた。
 多額の資産があるがために自由に生きられないなんて。中国の俚諺に親が息子に語った。決してお金持ちをうらやましいと思ってはいけないよ、と。
 創業よりは継続が難し、特に2代目の経営者のそんな悩みを受け止めて提案していけたらいいと思う。