職務上請求書の意味2011/12/03

 新聞各紙がまたぞろ「職務上請求書」の不正使用を報じている。
 今回の事件は司法書士のS先生が東京司法書士会から正式に買った職務上請求書をもとに1万枚の請求書を偽造したというもの。これを探偵社に売って利益をあげていたらしい。朝日新聞には「報酬1億円か」(2008年11月から3年間)と大きな見出しで報じている。

 昨年の今頃、家系図の作成で行政書士が家系図の作成者(被告人)に売り渡し、被告が作成した家系図を依頼人に売った事件では1審、2審とも行政書士法違反の有罪であったが最高裁では逆転無罪となった。詳細はHPへ。

 http://www.gyosei.or.jp/topics/topic_161.html

 職務上請求書は各県の行政書士会で1冊500円程度で販売されている。それを1枚3000円で売ったり、今回の事件では5000円から15000円で売っている。それを1万枚も刷れば(偽造)単純に計算しても5000万円にもなるから美味しいわけだ。
 しかし、頻繁に購入すれば行政書士会や司法書士会でもおかしいと気づかれて調査が入る。
 12/2の朝日新聞では社会面に大きく「三重の行政書士に依頼」と報じた。ここが三重県行政書士会の調査で発覚した。同紙は背景には婚約者や商売相手の身元調査に必要とするからという。しかし、これは目的外の使用なのでだめ。
 例えば同和出身についても職務請求書を使って戸籍謄本を取り寄せれば部外者でもすぐに分かる。登山などで三重県南部の山村に行くと身元調査お断りなどと大きな看板が目に付く。自ら公表しているようなものだがそれだけ差別が深刻ともいえる。

 このような不正が続いたため2008年5月、改正住民基本台帳法と改正戸籍法が施行された。刑事罰として30万円以下の罰金が科されることになった。件の三重県の行政書士も改正前であるが31万2千円の過料の決定を受けている。

 WIKIによると「過料(かりょう)とは、日本において金銭を徴収する制裁の一。過料は金銭罰ではあるが、罰金や科料と異なり、刑罰ではない。」

秩序罰としての過料には、民事上の義務違反に対するもの、民事訴訟上の義務違反に対するもの、行政上の義務違反に対するもの、地方公共団体の条例・規則違反に対するものがある。

民事上の義務違反に対するもの - など
民事訴訟上の義務違反に対するもの - 民事訴訟法192条など

行政上の義務違反に対するもの - 住民基本台帳法50条など
地方公共団体の条例・規則違反に対するもの - 地方自治法14条3項など
地方税の滞納処分の例によって徴収される(地方自治法231条の3)。

過料といえども新聞で報道されると社会的制裁の方が大きい。まして刑事罰となると前科がつく。信用毀損が大きく割に合わない。

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