サクセスフル・エイジング2012/02/13

 表題は社会保険委員会が主催したセミナーのテーマだった。名古屋市公会堂4F。講師は同朋大学教授の伊東真理子氏。
 最初にHPから
http://www.marikosensei.com/concept/index.html
 司会から紹介された後、自己紹介の形で略歴を述べられた。介護スタッフ110番からコピーさせてもらう。
 「主婦から教授、ついに博士号 大院大伊東さん 15年、福祉を研究専業主婦から2年前に同朋大(名古屋市)・社会福祉学部教授になった伊東真理子さん(58)=大津市在住=が今春、母校の大阪学院大(吹田市)・大学院の博士号を取得した。約15年かけ、主婦業と講義の合間を縫って高齢者福祉に関する論文を書き上げたといい、「これまでの研究の集大成になった」と喜ぶ。
 静岡県出身の伊東さんは、経済的な理由で大学進学を断念。1974年に結婚、専業主婦として10年以上を過ごした。長女の子育てが一段落した頃、夫の実家が所有する土地の売買交渉をした際、相談した税理士が質問のたびに法律資料を見て答える姿を見て、「勉強して自分が税理士に」と一念発起。大阪学院大学経済学部の通信教育で2年間学び、88年に学士号を取得した。
 その後、大学院に進学して経済学の研究を続けるつもりでいた。しかし、「誰も手をつけていない研究分野に挑戦してみないか」との指導教官の一言が、進路を変えた。
 勧められたのは、当時はまだ関心の低かった高齢者福祉。紹介されて訪ねた京都の老人保健施設で、健康になっても、帰る場所がない人たちの実態を目の当たりにし、この分野の研究の重要性を痛感。その後の研究テーマに決めた。
 施設では、風呂上がりでほおが赤くなった女性に「とってもきれいね」とほおに触れると、「あしたも来てくれるか」と握った手を離さなかった。思わず「はい」と約束し、施設カウンセラーとして働くことに。福祉の現場を体感しながら93年まで、大学院修士課程、博士課程で5年にわたる研究を続け、独居老人の自立などに関する論文も執筆した。博士論文は、今後の高齢化率や総人口の推移に着目するなど大局的視点から「2050年に日本の人口は微増する」との仮説を立て、「長寿社会では元気でいて、どう生きるかが重要になる」と説く。
 3月、母校の修了式に臨んだ伊東さんは「日本中の高齢者を元気にするため、様々な提言をしていきたい」と話す。」(2009.5.8.)

 紹介記事の通り、終始一貫して元気な話しぶりに聴衆を飽きさせない。61歳?とは思えない若さのある美人先生でもある。現場体験を経て積み上げられた学問的な知見の一端をご教示願った。
 話の中に多数口にされたサクセスフル・エイジングなる語彙はインターネットで検索すると多くヒットする。
http://www.tyojyu.or.jp/hp/menu000000100/hpg000000003.htm
健康に関しては
http://www.flkk.co.jp/talk/2012/01/05/post_2.html
 アメリカでは老年学が発達しているようだ。歴史の浅い国ではすべてが新しい現象であるから学問の対象になる。しかし、日本では貝原益軒の『養生訓』がある。WIKIから
「益軒83歳の正徳2年(1712年)、実体験に基づいて書かれた書物である。長寿を全うするための身体の養生だけでなく、こころの養生も説いているところに特徴がある。
 『孟子』の君子の三楽にちなみ、養生の視点からの「三楽」として次のものが挙げられている。
1.道を行い、善を積むことを楽しむ
2.病にかかることの無い健康な生活を快く楽しむ
3.長寿を楽しむ。
また、その長寿を全うするための条件として、自分の内外の条件が指摘されている。まず自らの内にある四つの欲を抑えるため、次のものを我慢する。
1.あれこれ食べてみたいという食欲
2.色欲
3.むやみに眠りたがる欲
4.徒らに喋りたがる欲
 さらに季節ごとの気温や湿度などの変化に合わせた体調の管理をすることにより、初めて健康な身体での長寿が得られるものとする。これらすべてが彼の実体験で、彼の妻もそのままに実践し、晩年も夫婦で福岡から京都など物見遊山の旅に出かけるなど、仲睦まじく長生きしたという。 こうした益軒の説くことは、今日の一次予防に繋がるものである。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%8A%E7%94%9F%E8%A8%93
 真理子先生も短時間では触れることができなかったのかな。或いは尾張藩の家老だった横井也有のような俳人もいた。ちょいと検索すると次がヒットしたのでコピーさせてもらう。
 「也有は、53歳で役職を辞し、前津にて隠棲生活に入る。『鶉衣』に記された、物事にとらわれない也有の自由な精神に驚嘆するとともに、也有のように生きたいものだとつくづく感じ入る。
 数年前に出版された本に、
 【岡田芳郎著『楽隠居のすすめ』-『鶉衣』のこころ-】
という本がある。『鶉衣』の解説書であるが、非常に示唆に富んだ本であり、ぜひ皆さんも一読されるとよい。最近話題になっている『下流階級』(三浦展著)という上昇志向一辺倒のくだらない論考の対局にある、自然でとらわれのない精神世界が『鶉衣』の中にはびっしり詰まっている。
 また、名古屋市の東山植物園には、也有の遺徳をしのび、也有にゆかりの深いたくさんの 植物を植え、それぞれにちなんだ也有の俳句を添えて、散策を楽しめる「也有園」が作られている。
 
 ついでであるが、『楽隠居のすすめ』の中に、哲学者で精神分析家のユングによる「幸福の五つの条件」という項目が引用されていてその通りかな!と納得した。
 ① 心身が健康であること。
 ② 朝起きて今日やることがあること。
 ③ 美しいものを見て美しいと思えること。
 ④ 楽しい対人関係が保てること。
 ⑤ ほどほどにお金があること。
特に②は大切だなと思う。⑤も切実かな。③と④は何とかなる。①は私にとっては大変苦しい条件だ。」
 
 どうだろう。江戸時代にすでにサクセスフル・エイジングの考え方はあったと私は思う。益軒にせよ也有にせよ、今の時代にも通じることばかりである。それはアメリカには無い古典のありがたさである。むしろアメリカに教えてやるくらいの発信力が必要と思った。