知らなかったでは済まない一時所得か雑所得の話2013/05/28

 この前、新聞で大きく報道された税金の裁判の事件がありました。ソフトを改良して競馬で儲けたのはいいが、所得の判断で経費の認定がこんなに恣意的なものとは知らなかった。

 徴収する国は一円でも多く、申告する側は一円でも少なくしたい。

 昔、ネズミ講「天下一家の会」の主宰・内村健一はどんなに知恵を出して商売で儲けてもほとんどを税金で持っていかれるとして、ネズミ講を始めたという言葉が記憶の底にある。税金は罪深いものである。

 この競馬の人も知恵を出して大きく当てたはずが、税金で足元をすくわれた形である。

 税法は知らないでは済まない。外れ馬券は経費というが、国に納めるので前納の税金にしてもらえんだろうか。何%かを税額控除するとなれば少しは気が楽になる。実際競馬は独占事業ですからね。


「あなたのファイナンス用心棒 吉澤 大 ブログ」から転載

■当たり馬券の所得が雑所得と初めての判断が

ハズレ馬券の購入代金が当たり馬券の所得計算上必要経費であるかが争われた裁判に地裁で判決が下りました。

今まで、競馬の当たり馬券については「一時所得」とされていましたが
今回はじめて「雑所得」と認定されたのです。

外れ馬券:経費と認める初判断 脱税は有罪…大阪地裁

では、そもそも一時所得、雑所得、そして事業所得とはどんなものなのか整理してみましょう。

■本来は雑所得より一時所得のほうが税金は安い

個人の所得は10種類に区分がされ、所得計算上それぞれ違った取り扱いがされます。

今回、問題となった当たり馬券の配当は、通常は一時所得とされています。

一時所得とは「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」のこととされています。

具体的な例としては、当たり馬券の配当のほか、懸賞や生命保険の一時金などが挙げられています。

要するに、単発でいわば偶発的に発生した所得ということです。

この一時所得とされると、その所得の金額は(総収入金額ー収入を得るために支出した金額ー50万円)×1/2とされます。

この場合の「収入を得るために支出した金額」は、収入金額を得るために直接的に必要となったものに限定されるので当たり馬券の場合、その当たり馬券を購入するために掛かった馬券代だけであり、ハズレ馬券の購入代金は含まれないことになります。

それが、今回の裁判では、無申告であり脱税ではあるものの「多額、機械的、網羅的に馬券を購入しており、雑所得に当たる」と認定されました。

要するに、それだけたくさん網羅的に買った事で何度もあたったのであれば、もはや馬券が当たることはその人にとって単発で偶発的なものではないということです。

この雑所得は残りの9種類にどれもなじまない所得であり、その所得金額は総収入金額ー必要経費とされます。

この場合の必要経費は

(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
とされるのですが、今回はハズレ馬券が上記に該当するものとして必要経費と認められたわけです。

二つの所得の計算式をみればわかりますが、実は通常であれば「一時所得の方が雑所得よりも所得金額は小さく税金は安い」ことが多いのです。

ですから、たまたま万馬券が出たような場合であれば、むしろ一時所得の方が雑所得よりも税金は安かった。

そうならなかったことからも、今回のことは税法の想定外であったような気がします。

では、一体どの当たりまで馬券を購入していれば、一時所得ではなく雑所得なのか?

その基準は今回明らかにされることはなく、今後かえって馬券購入による所得がどの所得となるかの判断が難しくなったとも言えます。

■事業所得と雑所得の違いってなんだ?

一時所得とされなかった理由が、「たまたまじゃなくて、もはやプロだろ」
というのであれば、業としての所得である「事業所得」ではないかとも考えられます。

では、事業所得と雑所得では、税金の取り扱いにどんな違いがあるのでしょうか?

事業所得であれば、赤字になった場合に他の所得と損益通算ができます。

つまり「馬券購入事業」で赤字になってしまった場合には、他の給与所得などと相殺が可能となります。

一方で、雑所得であれば、仮に赤字になったとしても他の所得との損益通算はできません。

この違いは非常に大きいものです。

では、事業所得と雑所得の区分はどこでされているのでしょうか?

実は、その基準は非常に曖昧です。

サラリーマンの副業などでも、それが事業所得なのか、雑所得なのかによって税務の取り扱いが大きく異なるのに、その判断基準は曖昧なのです。

ぶっちゃけ、その人が「事業としてやっている」と届出を出せば事業所得として取り扱われることが多いと言えます。

少なくとも、売上高がいくら以下だと雑所得などという基準はありません。

なお、給与所得と事業所得との判断基準としては最高裁判所で「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意志と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」を事業所得であるとしています。

今回の「馬券購入事業」をこの基準にあてはめてみますと

・自己の計算と危険において独立して営まれる=◯
・営利性、有償性を有する=◯
・反覆継続して遂行する意志と社会的地位とが客観的に認められる業務=△

となり、馬券購入事業が「社会的地位が客観的に認められているか否か」というなんとも曖昧な基準で事業所得ではないとされていることになります。

じゃあ、今後馬券購入事業が社会的に認められたら事業所得になるのかと。

おそらくそうはならないでしょう。

なにせ、もし事業所得だということになれば、馬券を買ってハズれた赤字が給与などの所得と相殺され、源泉所得税の還付申請だらけになってしまいますからね。

■どこに「当たり馬券は一時所得」と書いてあるのか?

当たり馬券の配当を一時所得としているのは、所得税法基本通達という国税庁が独自に定めた見解によるもので、必ずしも所得税法上に
「馬券の配当=一時所得」という記載があるわけではありません。

しかし、国税庁はこの基本通達に固執し、我々税理士がその判断を覆すのは至難の業です。

そのため、実務上は、ほぼ通達=法令と考えた税務執行がされています。

この判決が出るまでは、「まあ、どんなに実情に合わなくてもどうせ一時所得だろう」と思っていました。

その点からすると、ここまで継続反復して網羅的に購入している場合には、「一時所得ではなくハズレ馬券の購入代金も必要経費とする」という判断は、今回の事案の実情に即したものだとは思います。

ただ、それならば、継続反復しているのだし、リスクも取っている上取引規模も十分事業と呼ぶのにふさわしいので事業所得とするのが筋なはず。

少なくとも、吉澤税務会計事務所の売上よりもはるかに多いです(汗

でも、事業所得とするのは税務行政上とても無理。

じゃあ「間を取って雑所得でいいか」なんてかんじで雑所得となったのでしょうかね。



そんなわけないか・・・

(検察側が控訴をする場合もあり、今回の判決が確定判決ではありません)

会計業務2013/05/28

 空は雲厚く、薄暑の候なりき。見るもの皆緑に染まりたり。三の丸の街路樹に小雨は降れど、地面にまでは届かず。木下闇。いよいよ、梅雨入りか。外堀が草でうずまる梅雨入りかな
 
 10:00~14:00まで顧問先にて執務。今日は小切手に押印をもらうことが主。銀行からの残高証明書が全行揃い、金額を照合。試算表をプリントアウトして役員に提出。
 先週、過去5年間の財務の推移を説明したが、訴訟費用など売上に貢献しない出費がなくなるのも、契約書の更新が効果を挙げ始めているのか。仕入先とのトラブルは今、一切無くなった模様。規模の大小よりも財務体質の弱い取引先は排除することも必要なのです。
 同じ苦労ならば、仕入れることに苦労するのではなく、売ることにエネルギーを注ぐことが肝心です。良い会社になる最低の条件はまず契約書を交付して緊張感を保つこと。
 通帳記入して、駐車料金などの記帳を確認する。午後より、通院の時間が迫り、銀行員への書類を預託する。