郷原信郎『告発の正義』を読む・・・・焼け野原にならなかった美濃加茂市2015/10/03

 ちくま新書。店頭で見て、平積みの本書のみ残り2冊程度だったのを読んで見た。第5章に美濃加茂市長事件における「告発の正義」があり、購入の動機になった。『検察の正義』につづく2冊目。
 メディアには全国最年少の藤井市長の贈収賄事件として大々的に社会面を賑わせた事件で、世間の耳目を集めたから新聞報道もよく読んでいた。検察主導、愛知県警、メディアも有罪を信じていた事件だった。
 本書を読むと、中林の4億円にものぼる融資詐欺に関して捜査が行われた形跡がない。金融機関側は詐欺に会ったにもかかわらず、被害申告されないとのこと。P166にあるが、悪質融資詐欺の「弁護人による告発」をすることとなった。これにより検察の正義が敗北に追い込まれて、裁判所の無罪判決に導かれた。
 より詳細は本書をお読みいただくことだろう。郷原弁護士のブログもあるので貼り付ける。無罪判決以前は溯れる。

2015年8月26日美濃加茂市長事件控訴審、事実審理開始で重大なリスクを抱え込むことになった検察
https://nobuogohara.wordpress.com/2015/08/26/%E7%BE%8E%E6%BF%83%E5%8A%A0%E8%8C%82%E5%B8%82%E9%95%B7%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E6%8E%A7%E8%A8%B4%E5%AF%A9%E3%80%81%E4%BA%8B%E5%AE%9F%E5%AF%A9%E7%90%86%E9%96%8B%E5%A7%8B%E3%81%A7%E9%87%8D%E5%A4%A7%E3%81%AA/

2015年3月19日組織の面子にこだわり「検察史上最悪の判断」を行った大野恒太郎検事総長
https://nobuogohara.wordpress.com/2015/03/19/%E7%B5%84%E7%B9%94%E3%81%AE%E9%9D%A2%E5%AD%90%E3%81%AB%E3%81%93%E3%81%A0%E3%82%8F%E3%82%8A%E3%80%8C%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E5%8F%B2%E4%B8%8A%E6%9C%80%E6%82%AA%E3%81%AE%E5%88%A4%E6%96%AD%E3%80%8D%E3%82%92/

2015年3月17日「美濃加茂市長無罪判決に検察控訴の方針」は、「妄想」か「狂気」か
https://nobuogohara.wordpress.com/2015/03/17/%E3%80%8C%E7%BE%8E%E6%BF%83%E5%8A%A0%E8%8C%82%E5%B8%82%E9%95%B7%E7%84%A1%E7%BD%AA%E5%88%A4%E6%B1%BA%E3%81%AB%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E6%8E%A7%E8%A8%B4%E3%81%AE%E6%96%B9%E9%87%9D%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%80%81/

2015年3月9日「美濃加茂市を焼け野原に」という言葉の意味
https://nobuogohara.wordpress.com/2015/03/09/%E3%80%8C%E7%BE%8E%E6%BF%83%E5%8A%A0%E8%8C%82%E5%B8%82%E3%82%92%E7%84%BC%E3%81%91%E9%87%8E%E5%8E%9F%E3%81%AB%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%AE%E6%84%8F%E5%91%B3/

 同時進行で観察してきた事件だった。危うく冤罪になりそうだった美濃加茂市長。私が20代の頃、住んでいた豊橋市でおきた母子焼死事件があり、若い男が犯人にされたが、弁護士のお陰で冤罪が判明した。豊橋事件といわれる。富山事件(氷見事件)も冤罪の記憶を蘇らせてくれる。美濃加茂市の事件も含めて、検察と警察の暴走と言われる。
 最近、知人から娘が検察官になったと父としての喜びのメールをもらったが、気楽におめでとうなどという、返信はできなかった。どうか世間知らずのまま、人を裁いたり、悪事を暴いたり、それを正義と勘違いさせないように人間として導いてやって欲しい。悪人は罪を逃れるためならどんなウソでもつく。涙を流す演技もやる。若い女性検事なんて簡単に騙される。人たらしという。
 本書にも中林の涙を流しながらの証人の態度に女性検事は達成感に溢れて(P176)いるように見えた、とある。検察官は法廷技術だけはしっかり叩き込まれるが、人間としては未熟なまま強大な権限に与えられるから恐い話だ。プライドも高く、何としても立件したい、出世したい意欲が暴走(冤罪)につながる。
 行政書士の当職には関係はないが、一国民として、社会の仕組みと人間の織り成す事件の成立を学ぶために、一読する価値がある本書の読後感であった。

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