起業する前にするべきこと2016/10/01

 「ニッポンの社長」というHPに居酒屋の和民の創業者・渡邊美樹氏の話が掲載されている。
 その一部を転載すると

 曰く「大学卒業後は、会社経営に必要な経理の勉強をするために、ミロク経理という会社に入社する。ミロク経理は当時、急成長ベンチャーとして知られた会社だった。そこで半年間勤め、バランスシートの読み方を覚えると、次に起業資金を貯めるために佐川急便のSD(セールス・ドライバー)に転職する。

 佐川急便の仕事は、月収43万円という高給だったが、その労働環境は過酷なものだった。一日の労働時間は20時間近く。さらに大卒の渡邉に対する風当たりも強く、先輩SDからのイジメが絶えなかった。そんな状況下でも渡邉が決して逃げ出さなかったのは、「お金を貯めて会社を創る」という夢があったから。渡邉は1年間で、300万円という資本金を貯め、佐川急便を後にした。」

 経歴を見ると大学時代から企画力が旺盛だったようだ。ないモノを創る仕事に人生を見出したわけだ。上記の転載部分は起業する前に会計知識が必要であったことを知っていた。
 しかし、簿記検定とか会計士の資格に挑むわけでなく、最初から実務を把握するためにミロク経理に入社して給料をもらいながら学んだ。カネを払って勉強するのではなく、カネをもらって且つ学んだ。
 他人よりも優位に立って雇われるために資格をとるのではなく、最初から人を雇用する会社経営を視座において学んだ。そこに非凡な才を見る。

 起業の要件は1人2モノ3カネと単純化していわれる。カネの中には資金調達だけではない、会計の知識を含めていたのである。

 これまでの仄聞も含めて見聞をいえば、会社をつぶす経営者はおおむね会計の知識が乏しいことがある。

 起業成功率は1年で40%、5年で15%、10年で6%というデータがある。さもありなんと思う。

 原因と対策
1お金をかけ過ぎる
・・・身近な例として、最初から毎月15万円の駐車場付店舗を借りて、オフィス家具も新品で揃えたが、行き詰まってしまった人がいた。思うように売上が伸びなかったので自己資金を使い果たしたのである。
 また、知人の親族は先祖伝来の山を担保にして資金調達し、料理屋の規模を拡げたものの売上が伸びず、借金の返済に困窮し資産を失った。今は個人の料理屋に戻ったという。

 起業時は中古家具でスタートして資金を温存したい。見栄をはるのも商売上必要なこともあるが力をつけてからでも良い。身の丈にあった資金の範囲でやることだ。

2ブームは必ず去る
・・・私どものような行政書士業界でも時代による流行り廃りがある。海外旅行ブームの際はパスポートの代理申請でも大きく儲けた人がいたことを新聞で知った。しかし、今はだれでも自分でやるからブームが去ったといえる。弁護士、司法書士でもサラ金訴訟の代理で大きく儲ける士業がいたが今はブームが去った。

3手を広げ過ぎ
・・・ブームを本物の需要と思い投資したら終焉して重荷になった事例はあまたあるだろう。資金は目いっぱい使って効率よく経営するのが正しいとばかりに手を広げ過ぎるのである。
 儲けは必ずしも余裕資金になるとは限らず、余裕資金は儲けとも限らない。勘定合って銭足らず、の言葉をよく知っておきたい。とりあえずは定期預金で運営するとか、バランスシートを見て投資の決断をしたい。

4事業計画の杜撰
・・・1から3までを眺めてみれば長期的視点が大切と思わされる。一時のブームに踊らされず、資金を蓄積しながら真坂の急変にも対応しておく心がけが必要である。