遺産相続の盲点ー貸金庫2016/11/08

 昨日、被後見人の預金証書等を貸金庫に収納した。
 今日になってはっと気付いたのは契約者が死亡した場合の措置だ。後見人の場合は私個人の名義と保証人をつけて使用している。だから被後見人が死亡しても関係ない。

 被相続人が死亡したら預金が凍結されるのはよく知られることだが貸金庫はどうなのか、検索してみた。
 やはり、これも凍結されるのである。

 ブログ「フツーの人のための相続講座」さんの「故人名義の貸し金庫が銀行にあることがわかった場合」から
以下引用

「大事なもの(権利証書、遺言書原本)なども、貸金庫に入れておくという人は少なくないようですが、故人の口座に関しては死亡と同時に凍結されるので、貸金庫も開けなくなることがあります(ありますっていうか、開けません)。意外な盲点を見逃さないようにしなきゃなりません。」とあった。
 遺言が無い場合には、貸金庫も相続人全員の共有の財産とみなされます。預金と同じように、貸金庫も凍結されます。

参考:相続開始後すぐに預金は凍結される?引き出せるか?

・・・・本当に意外な盲点だった。この点を現在相談中の人にも伝えねばなるまい。妻か長女も名義人にしておきたい。
続けて

 貸金庫を利用していた人がなくなった場合、相続人全員の前で貸金庫を開けることになっています。ですから、相続人全員で銀行に行って、貸金庫を開ける様子を見守る必要があります。その場に立ち会えない相続人がいる場合には、委任状をとらなければなりません。

貸金庫を開けるためには、

死亡届
相続人全員の戸籍謄本
印鑑証明
住民票

などが必要になります。誰か一人が、貸金庫を開けてしまい、その後、権利証書や資産を不公平に分配してしまうことを避けるためでしょうけれども、これもまた、非常に不便な制度です。

・・・・これはこれは面倒なことである。結局遺言状を書くのが面倒が少ないと分かる。

 『遺言状を書いてみる』から
 名義人が死亡した場合、預金払い戻しのために求められる書類
・死亡届(銀行備え付けの用紙)
・戸籍謄本(相続人全員を確認できるもの)
・除籍謄本(亡くなられた方の除籍が確認できるもの)
・印鑑登録証明書(相続人全員の三ヶ月以内のもの)
・遺産分割協議書(いずれも相続人全員の実印を押したものを要求する傾向が強い)

 一番問題になるのは、亡くなった人(被相続人)の除籍謄本というやつだ。それ以外のものは、生前に準備しておくこともできるのだが、この除籍謄本というやつだけは、ご本人が亡くなった後、医師の診断書(または検案書)をつけて役所の戸籍係に届け出て初めて作られる。予め用意しておくということができない性質のものなのだ。しかも、死亡届を出したからといって、すぐに除籍謄本がとれるというものではない。

 戸籍係のお役人がこの届出を受理して、戸籍の原簿にこれを記入してくれないことには、謄本も出てこないのだ。届け出をして、都内の場合、本籍地の戸籍係に死亡を届け出て原簿に記入がされるまで、だいたい早くて1週間はかかると言われている。本籍地が遠隔地の場合はもっとかかってしまう。」(P78-79)(参考:書評 遺言状を書いてみる)

 相続人全員の合意で作る遺産分割協議書が無ければ、銀行はまず、預金の払い戻しを認めません。(実際の判例では、相続人の法定割合にもとづいて預金は引き出せるようですが、多くの銀行は揉め事に巻き込まれることを恐れますから、単純に口座を凍結します)。遺言書が無ければ、当然、遺産分割協議に進みますが、これが簡単に進むことのほうが少ないと言えます。

 モメる遺産分割協議は、相続税申告期限の10ヶ月目までかかることがあり、ずっと口座が凍結されたままだと、各種の公共料金の支払や、生活に必要なお金も引き出せないことになります。亡くなったのが一家の大黒柱だと、それこそ生活に窮します。そのため、当面の現金を確保するために、生命保険に入ったり、遺言を残して遺産分割協議を行わなくてすむようにしたり、することができますが、そこまで備えをしている人のほうが稀かもしれません。

 余命宣告を受けて、徐々に死に向かうなら、用意もできるというものですが、突然亡くなってしまう場合には何の備えもできないまま、家族を煩雑な相続問題に投げ込んでしまいます。可能であれば、遺言書を今から書くことを考えておくのが良いのかもしれません。
(参考カテゴリ:遺言を書く)

 ◎遺言書があればすぐに開けられる◎

 法的に有効な遺言があり、遺言執行者が指定されていれば、すぐに貸金庫を開けることができます。遺言執行者は、相続の代理人の代表者とみなされるため、一人で金庫を開けることができるのです。当然、銀行は、有効な遺言書かどうかを確認しますので、自筆であれば事前に家庭裁判所で検認を受けておく必要があります。

 くれぐれも、遺言書を貸金庫に入れないようにしましょう。もっとも安全に思えますが、もっとも危険な場所ですから。

・・・・結局振り出しに戻って遺言状を勧めることになる。また、残された妻が認知症になった場合の成年後見制度の説明もしておかねばなるまい。

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