宮脇淳子『日本人のための世界史』(KADOKAWA)2017/03/23

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成29年(2017)3月3日(金曜日)通算第5206号 <前日発行>から転載。
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 世界史から抹消されている二つの帝国
  だから世界史はつまらない暗記学問として人気がないのだ

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宮脇淳子『日本人のための世界史』(KADOKAWA)
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 世界史の教科書がおかしい。
 ま、日本史の教科書がまるでおかしいから、世界史教科書がまともであったらへんなことになるのだが、歴史を解釈する大事な視点が異なると、欧米の改竄史観が、日本史でも世界史でも、応用され、ただしい歴史観は片隅に追いやられるか、消される。
 世界史から消された「二つの帝国」がある。
 真実をしれば、世界史の真実が見えてくるのだが、その前に簡単な序説として、たとえばコロンブスのアメリカ大陸の前にカリブ海にいた先住民族の歴史はどうなるというのか、英国人探検家がヴィクトリア瀑布を発見したと言うが、ずっと以前から当該地区には先住民が暮らしていた。
 コロンブスはジェノバで鄭和艦隊の海図をみて、大航海を思い立った。だからコロンブスが大航海時代の先駆者という西欧歴史学評価は、あまりに西欧先制主義である。
 マルコポーロは日本が黄金の国であると世界に吹聴した。マルコポーロは甘粛省に一年以上留まっているが、日本に来たことはなかった。
 消された文明はマヤ、インカ。。。。シュメールも、スキタイも詳しいことは判っていないし、ホメーロスの歴史は、シュリーマンがトロイの遺跡を発見したことによって、神話ではなく、本当の話であることがようやく判った。

 世界史の教科書から消された「二つの帝国」とは、モンゴル帝国と日本が世界史のプレイヤーだった「大日本帝国」である。
 「戦前の西洋史と東洋史はいちおう、それぞれ古い時代から近代に至るストーリーがあり、話の辻褄も合うものでしたが、それを合体させた戦後の世界史は、西洋史と東洋史を年代ごとに輪切りに並べた」(中略)。このため「人気がなくなった」。
 しかも「現在の世界史のもとになっている、戦前の西洋史、東洋史そのものにも大きな問題があります」と宮脇淳子氏は最初に言う。
 「現在の中国やロシアは、十三世紀にはモンゴル帝国の一部でした。ドイツやハンガリーもモンゴル軍の侵略を受け、モンゴル軍はもう少しで、ヨーロッパ全土を征服する」筈であった。
つまりモンゴル軍はウィーンまで行っていれば、いまごろ西欧は学校でモンゴル語を教えていただろう。
 ちなみにシベリアの語源であるシビルは鮮卑である。鮮卑は隋、唐を開いたが、漢族ではない。
 こうした真実の歴史が消されたのは、中国にとってもロシアにとっても、インドも、イランもモンゴル軍に占領された事実を隠したいからで、とくに日本の歴史教科書にいたっては「戦後の日本は自らの視点で歴史を構築することなく、他国から言われたものを世界史として受け取ってきたからです。中国や韓国にとって大日本帝国の位置づけはつねに悪であり、世界の主要プレーヤーではありません。だからこそ日本人自身も」、自虐的史観の罠に嵌ったのである。
 したがってモンゴル帝国と大日本帝国という二つの帝国が、「人類の歴史にほんとうに大きな役割をはたしたにもかかわらず、いまの世界史では無視されています」と宮脇氏はまとめるのだが、歴史の真実を私たちは、そろそろ知っておく必要がある。

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