認知症で財産動かせず…元気なうちに子らに任せる「家族信託」注目2018/06/29

ソース:
http://www.sankei.com/life/news/180629/lif1806290020-n3.html
 超高齢化が進むなかで、最大の関心事のひとつは認知症だろう。平成28年度版「高齢社会白書」では、65歳以上の認知症患者は、24年に約462万人(7人に1人)だったが、37年には約700万人(5人に1人)になると見込まれている。認知症では介護の問題がクロースアップされるが、実は判断能力が衰えることで財産を動かせなくなってしまうという問題もある。トラブルを避けるため、元気なうちに家族に財産管理を任せる「家族信託」が注目されている。

 両親が施設に入居

 川崎市に住む女性(50)の両親は、同市内のマンションで夫婦2人、元気に暮らしていた。しかし2年前、父(84)の認知症が進み始め、特別養護老人ホームに入居することになった。すると母(86)も「1人暮らしより老人ホームに入りたい」と、自分で気に入ったホームを見つけてきた。

 両親の新生活がスタートしたが、費用の問題に頭を抱えることに。「別々の施設に入ったために月々の支払いは40万円を超えました。これから何年出費が続くのかと思うと、先が見えない不安に陥りました」

 そこで女性が考えたのが、両親がいなくなったマンションの売却。放置しておくと資産価値がみるみる下がってしまう。「早めに売って施設の費用に充てよう」と考えたのだ。

 ところが、不動産業者を訪ねて、事態は簡単なことではないと分かった。マンションの所有者である父親が認知症だということを話すと、売却の仲介を拒否されたのだ。所有者である父親の意思が確認できなければ、不動産の売買はできない、と。

成年後見もあるが…

 認知症で判断能力が衰えると、不動産の売買のほか、定期預金の解約や保険金の請求などもできなくなってしまう。そこで、不動産業者から勧められたのは成年後見人を立てることだった。家庭裁判所に申し立てをすれば、後見人が代理で売却できる、とアドバイスされた。

 女性は後見人の申し立てに傾きかけたが、重要なことに気づいて取りやめた。後見人をつけた場合、マンション売却によって得た代金は父のためには使えても、母のためには使えなくなってしまうからだ。途方に暮れていたところ、見つけたのが「家族信託」という制度だった。

 まずは専門家に相談

 家族信託は文字通り家族を信じて財産を託し、管理してもらう方法だ。家族信託コーディーネーターの横手彰太さんは「家族信託は、子供のお年玉を親が預かるのに近いイメージ」と表現する。

 子供には高額なお年玉を管理する能力がない。そこで親が預かって、子供の学資に充てるなり、必要なものを買うなりする。家族信託では逆に、認知症で判断能力の低下した親に代わって、子供が親の財産を管理し、親のために財産を活用する仕組みだ。

 すなわち、親の判断能力が衰える前に親子の間で契約を結び、親から子に財産の名義を移しておくことで、親の認知症が進んで判断能力を失ったとしても、子供は契約に基づいて自分の判断で財産を動かすことができる。

 家族信託は信頼に基づく契約だが、不安があれば「信託監督人」を別に置いて、お金の出入りや使い道をチェックしてもらうこともできる。
 家族信託の契約には、どんな財産を信託するか、委託者(親)が亡くなった場合はどうするか、などの細かい設計が必要で、税理士や司法書士らの専門家の助けが欠かせない。ただ、新しい仕組みのため、専門家なら誰でも詳しいというわけではないので注意が必要だ。

 女性はこの年のうちに父と信託契約を結び、無事にマンションを売却することができた。今は家族信託の受託者として、父と母それぞれの介護費用を管理している。「あれから1年半。母も娘に任せたことで安心したようで表情が明るくなりました」と話している。(「終活読本ソナエ」2018年春号から)

・・・・娘が2人いる高齢の知人の中にも、任意成年後見と信託の利用を勧めたことがあった。考えているうちに、知人の方で自宅を売却し、代金で自宅用マンションを購入。知人は次女と同居。死後は次女の所有になるとした。相続であれこれ悩む前に生活のダウンサイジングをはかったのだ。

 長女は売却代金のうち、大学へ進学する孫への教育資金を受け取られたようだ。これで事実上、生前贈与を果たすことになった。知人の意思がしっかりしているうちに分かりやすい贈与を実施したのである。長女の家には夫の母が同居している。しかも知人よりも若い。長女が二人の母の面倒を見るわけにはいかない。
 家族信託は理論的には合理性がある。しかし、誰が受託者になるか。親族間の政治がある。つまり、長女には夫、夫の母の干渉(入知恵)が入る。

 知人がしっかりしている間は遠慮が働くが、認知症になったり、施設に入居でもしたら、たちまち親族間の政治のバランスが壊れて夫主導になってしまう。

 知人はそこを配慮して、思い切って売却されたのだろう。自分の生活費を残して、生前に分けてしまえば良いじゃないか、ということだった。家族信託には語られない事務管理の煩雑さ(専門家に有料で依頼する部分)を回避できてさっぱりする。懸命な選択だった。
 相続、資産運用も気苦労の多いことである。

 家族信託ありきではなく、生活を見直して、必要とあればダウンサイジングを実施する。その上で、成年後見制度利用か家族信託かの検討がいる。

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