腐らなければ何とかなる!2013/09/23

 作詞家・星野哲郎(1925~2010)が島津亜矢(1971~)に言った。「お前の喉と根性が腐らなければなんとかなる」と。島津亜矢は小学生時分から地元・熊本県周辺ののど自慢大会で軒並み優勝をさらい、天才歌手のウリで14歳で星野へ弟子入りした。そして15歳でプロデビューを果たす。19歳で挫折するがすぐに所属事務所から独立して復帰。その時の言葉だろうか。

 世間通、人間通の星野さんが世間知らずの天才型の年少歌手に諭す言葉としてはよく出来ている。歌手も言わば、自営業であり、個人事業主であろう。才能を切り売りしてゆく点では弁護士などと同じである。所属事務所がTVの鳴り物入りで囃す時代は終わって、今はドサ周り(コンサート)で稼ぐ時代である。この前の清水コンサートは優に昼夜2回で、約3000人の有料入場者があった。チケットの単価は平均4000円として、1日でざっと1200万円にもなる。紅白常連の有名歌手でも観客動員数には限りがあるというから大したものである。

 要はどんな仕事かではなく、同業他者への差別化であろう。コンサートの構成にその創意工夫を見る。笑いをとるためのトークは最小限にし、下手な芝居を見せるよりも歌手島津で押し通す。
 島津亜矢が天分に甘えて、自分は誰よりも歌がうまいと自負し、ドサ回りに出なかったら、酒場の片隅で腐っていたかも知れない。今日の人気を博することはなかったであろう。

 朝のネットサーフィンをしていて見つけたサイトの記事。

  司法書士、税理士etc.は必要とされなくなる!?
「仮に士業が規制緩和されたら、業種によっては9割が食べられなくなる時代がくるかもしれません」

 そう警鐘を鳴らすのは、育児の傍ら勉強して資格を取得し、スタッフ22人を抱える会計事務所を切り盛りする税理士の原尚美氏。その理由は、彼らの時代錯誤な特権意識にあるという。

士業「士業とは、言ってしまえば特殊な情報を売る仕事。しかし、インターネットが発達した現代では、その情報自体が社会に出回ってしまい、士業に対する期待値が全体的に低下している状態です。実際に、申告書を作成する会計ソフトも販売されています。これからは士業といえども生き残るために“経営をサポートできる”など独自のサービスを提供していく必要があります。ところが、大多数の士業の人間の意識は昔のまま、肩書さえあれば仕事は保証されていると思っているし、食べていけると思い込んだままなんです」

 そして、その特権意識が“食えない士業”以上のさらなる悲劇を呼ぶ。

「仕事がない理由をコミュニケーション力の欠如に求め、無駄に人脈や営業力を磨こうとして付け込まれています。例えば、士業が顧客を集める方法のひとつにセミナーの開催がありますが、その“セミナーに人を集めるためのセミナー”なんてものさえある。今は士業より士業コンサルタントのほうが儲かるくらい、いい“カモ”にされているんですよ」

 コンサルタントに踊らされた結果、名刺に血液型や趣味を書き込んだり、飛び出す絵本のようにしてみたりという冗談のような話すらあるという。

「ほかにも、ホームページ上などで複数の資格を取得していることをアピールする人がいますが、これもダメな士業のパターンのひとつ。少し考えればわかりますが、食べられないからほかの資格を取るわけで、弁護士は弁護士以外の資格を取りませんから」
 
 原氏はとにかく士業の人間は世間知らずが多いと嘆く。

「公務員や大企業を目指すのと同じ保守的な意識で資格を取っても、厳しい現実が待っています。まずは時代が変わったことを認識すること。その上で、いかに自分のサービスに付加価値をつけられるかということに挑戦する起業家マインドを持ち続けることが大切でしょう。そうしなければ、今後9割の士業は無用の長物となり、必要とされなくなるでしょうね」

【原尚美氏】
税理士。大田区蒲田に構える原会計事務所代表。著書に『一生食っていくための「士業」の営業術』(中経出版)など
以上

 他に「[年収500万円程度]で終わった男たちの金言集」の中の次の言葉も目を引く。

 「自分に自信を持ちすぎるな。周りの人間をバカにしていると、いつか自分がバカにされる」(建築業・55歳)
以上

 私の身内にもいる。東証1部上場企業を辞めて独立したその男は30歳前後で高収入を稼いでしまった。辛口のアドバイスとして「お前さんの営業力、知識、技術等が優れているから稼げるんじゃないよ。誰でも知っているメーカーの看板を信頼して買いに来るんだぞ」と言ってやった。
 馬耳東風で高級車を買うわ、新築マンションを買うわで、生活レベルをアップしてしまった。そこへバブル崩壊が来た。ひとたまりもなかった。今はアパートの家賃の支払にも苦労している。独立する才覚が無いから会社員のままなんだと当方は馬鹿にされていた気がする。稼ぎ続けるのは容易ではない。
 自己過信は災いの元である。

 当方へは営業支援しましょ、とホームページの売込み、ネット広告の売込み、輪をかけて業務の有料研修の案内、営業商材など沢山の売込みが入る。有料研修とは例えば、相続の手続きを教えるのだが、1回20万円から30万円の研修費を取る。丁度、相続の本番でもそんな相場だから同業者をカモにしているような気がする。手続きは六法に書いてあるのでホントは仕事のとり方を伝授してもらいたい。お付き合いしたのはHPの作成だけである。世の中にうまい話はないのである。
 開業3年で目標の50%近くまで来たが、仕事をもらうのは、挨拶回りと開業案内に配布した300枚のはがきからであった。つまり人脈であった。結果として広告費投入はムダであった。

 腐らないためには自分本位を貫くしかない。自分の頭で考えること。そのためにはカネ=時間がいる。カネは時間の貯蓄である。
 タコの糸と投資のカネは伸ばし切らないこと、と投資の金言にもある。企業では社員に100%能力を出し切れ、能力の出し惜しみをするな、と発破をかけるが、経営者の立場は逆である。
 登山と同じで、全力で登らず、常に下山の余力(撤退、廃業時の清算、縮小)を残すことが必要である。登山には観天望気が必要なように経営者には社会観察が欠かせない。