改正民法 施行まで半年 契約ルール変更 対応急ピッチ2019/11/04

 連帯保証人制度は連帯保証人にとっては怖い制度である。
 債務者は気軽におカネを借りたり賃貸住宅を借りたりできる。これは債権者保護の法律であった。近年は連帯保証人の保証債務が履行できなくて自殺したりする事件も聞く。年間3万人も自殺者がでていた時代は相当数の連帯保証人がいたであろう。保証したからとて、連帯保証人にはお礼や何らかのインセンティブがあるわけではなく、損失のみを引き受けるのだから滅多なことでは保証人にはなれない。
 私も身内の連帯保証人になっているが、高齢になった今は解除してもらうことも促すつもりである。保証債務を履行して、債務者に債権が移転することにるが、返済能力はないので持ち出す一方になり、共倒れになるからだ。親戚だからと甘い考えでは自身が苦労する。そして感謝してもらえるわけでもない。
 同業の行政書士で孤独死専門の遺品整理業者がいる。事例の研修で知ったのは、連帯保証人の怖さだった。自分の娘を嫁がせた相手の夫のアパートの連帯保証人になった父親がいた。この夫婦はやがて離婚したが、連帯保証人の賃貸契約はそのままだった。元の夫は孤独死してしまい、部屋で腐乱し、室内だけでなく、下の部屋にも汚れが出た。住人は退居するしかない。このためアパートのオーナーは全体的な改修を余儀なくされた。その費用600万円余は原状回復費として連帯保証人に降りかかった。滞納家賃、残置家具の撤去の費用の保証だけでは済まないことがあるのだ。 
 まったく赤の他人の保証債務の弁済なんて地獄である。事実は小説より奇なりで、あって欲しくないことが現実にある。
 この民法改正の影響は大きい。
 雑誌などでよく賃貸か持ち家か、と論争がある。私はローンも家賃もない住居が一番と、中古マンションを選択した。ローンは15年で終わり、今は修繕費などの負担はあるが家計に占める割合は小さい。賃貸派の勘違いは失業や病気、解雇などで収入がなくなった際の家賃の財源の確保である。それがないと連帯保証人に払わせることになる。やっぱり親子のような濃密な関係でないと連帯保証はできない。
 事務所も最初は保証人なしの超老朽賃貸の部屋だった。建て替えで退居することになり改めて賃貸事務所を探したがみな高い。しかも連帯保証人を求められるし、保証会社の保証料を払わされる。そんなに夜逃げが多いのか、と質すと多いらしい。(マジで)最初から信用はゼロだった。それで家賃の1年分掛ける10年分の範囲内で分譲を購入した。家賃の前払いであるが、土地代くらいの価格で売れれば良しとした。
 連帯保証人に厳しいだけだった民法の改正は遅すぎたくらいだ。正社員が減って臨時の勤め人が増える傾向もあり、これからますます賃貸住宅は難しくなるだろう。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51687550R01C19A1TCJ000/

コメント

トラックバック