公証人役場で2019/07/09

 何とかもってくれよと願う、どんよりした梅雨曇り。朝11時に同乗してAさん宅に向かう。Aさんは高齢だが元気だ。
 昨年4歳下の妻に病気で先立たれて独居老人になった。心配なのは自分の財産を唯一の甥に託したい、と遺言書の相談に来られた。そこで遺言公正証書を勧めたところ合意を得て、本日公証人役場で証人の1人になった。遺言執行人にもなった。公証人が原文を読み上げた。原本に署名した。原本は役場に保管、正本と謄本が当方に交付された。正本はAさんに、謄本は当職が預かった。
 これでAさんも安堵を得られたことだろう。もうすぐ亡妻の一周忌が巡ってくる。妻に先立たれた男は弱い、と聞くが、足はしっかりしているので自活はできる。自宅もよく片付いていた。断捨離をしているのだろうか。任意後見も勧めた。他人の世話になりたくはないが年を取るとそうもいかない。
 幸い、1日もってくれた。今夜は新しく買い置きしてあった焼酎の水割りにした。肴はアサリの酒蒸し。

法務相談会(4回目)2019/07/09

 梅雨曇り、早朝の地下鉄に乗って朝食会の会場のホテルへ。早目に出たが7時を過ぎた。既にテーブルは80%くらいは埋まっていた。高級な食事をした後は恒例のスピーチである。今日のテーマは不動産の動向であった。
 興味深いのは民主党政権時代の2009年から2012年は地価も急落し、安倍政権になるまで全国的にマイナスだったこと。アベノミクスが始動すると東京圏と名古屋圏は軌を一にして上昇を開始、大阪圏は2017年に下落ゼロになり、地方圏も2019年になってようやく頭を出してきた。しかし、この数値はあくまでも平均値で、下がるところは下がっている。
 名古屋圏は駅前圏の開発が一段落、今は栄圏に移ってきた。御園座のタワービル、中心地の丸善はすでに更地、丸栄は取り壊し中、旧東海銀行の本店ビルも取り壊し中、中日ビルも営業を終えて近々のうちに取り壊す。リニア新幹線開通までに大規模な開発ラッシュが続く。

 興味深い話だったが次の予定があり、中座。名古屋市郊外に近い地銀支店の相談会に急いだ。ギリギリで間にあう。女性の支店長さんに挨拶後、すぐに相談者が入室された。
 1 義理の母(亡父の後添いだが養子縁組はしてない)の世話をするために法的な壁をどう解決できるか。すでに亡父の相続は済んでいるが、残された義母が心配という。あちこちであなたには世話をする資格がないという壁に当たったというのだ。姻族関係であり、法定後見の申立てはできる。義母の認知症がどの程度か、客観的に判断するために医師の診断が必須として材料集めを勧めた。
 2 父に代わって認知症の母の成年後見人に就任後、父が死亡。相続手続きを進めるに当たり特別代理人を申立てすることとなった。法定相続情報一覧図も作成済み。申立ての書類のチエックを依頼された。家裁のHPからダウンロードした様式にきちんと入力してあるので形式的に問題ない。
 3 昨年、夫が死亡し未亡人となった。相続は済んだものの2人の子どものうち娘が未婚で、派遣社員の身分が不安という。法的な対応策を求められた。亡夫から相続された財産の内、自宅を売却し、おカネを作って、中古マンションを購入して娘を自立させるために別居したいという。
 小津安二郎の映画「秋刀魚の味」を思い出す。未婚の娘を「便利に使ってきた」と述懐する老父役の東野英治郎は元教員にして今はラーメン屋の主人。娘の将来を案じるが妙案はない。
 話の筋は違うが人生は思いがけない展開をして終わる。本来なら娘の孫を抱く老後を夢想していただろうに。それが秋刀魚のはらわたのほろ苦さを暗示する。
 結局相談者には中古マンションを母名義で住まわせるが、自分の死後は「娘に100%相続させる」と遺言公正証書を提案。ちょっと甘い気がするが・・・。
 予約者5名のうち2名は急用でキャンセル。昼食後、飛込を想定して2時間ほど待機して辞した。平針駅へ向かうバスの車窓からは緑濃く映る水田が広がった。傍らに見えたのは余り苗である。捨て苗ともいうすでに田植えは終わったが、何かの不足に備えて余分に置いておく苗。
   例へれば余り苗めく娘の不憫  拙作

書類作成を受任2019/06/27

 朝は事業年度終了届けの入力作業で終わった。昨夜は事務所でできたところまでのファイルをGメールで自分宛に送信し、自宅のPCでダウンロードして継続作業。午後はこの前の相談会の5名のうち2名からすぐに来て欲しいとの催促があり、幹部と2名で自宅に赴いた。
 あいにく雨で足元は悪かったが、2家族とも受任につながり、その場で遺言書案の書類作成の報酬の現金を受領した。もう1件も相談後すぐ報酬相当額の送金に行きますと言われて、早く人生の悩みから解放されたい思いが伝わってきた。
 それぞれ必要書類の取得を依頼。さっそくと7/1に後見人申立の支援で入居施設に同行することとなった。弁護士、司法書士の資格者ならオール丸投げで受任可能であるが、行政書士は深くは関われないので書類作成の後方支援といったところである。

法務相談会(3回目)2019/06/18

 8時半、広報部長氏の車に同乗し相談会の地銀支店へ。支店長さんらとごあいさつの後、9時きっかりに相談者の来訪を受ける。応接室で様々な悩みを伺った。今回のテーマは遺産相続、成年後見制度、事業承継税制で、あらかじめ地銀が新聞の折り込み広告で募った5名だった。15時の予定だったが30分オーバーしたほど熱心な相談者もいた。
 中でも事業承継の相談者(80歳、男性)は奥様とともに相談に来られた。息子さんに50年育ててきた会社の経営を譲ったものの何か大切な手続きを忘れていないか、という漠然とした不安である。
1 経営権の譲渡の際に顧問税理士の入れ替えがあったことを聞き出した。創業者とともに歩んできた税理士は何でも知っているはず。しかし、若い息子に譲れば過去のノウハウ、財務諸表に現れない数字などすべてが失われる。経理事務員がいるというがリテラシーがあるかどうかは不明。新任の税理士が気が付けばいいが、創業者自身が漠然とした不安に襲われているのだから引き継ぎもなかったのだろう。
 会社の貸借対照表の資産の再評価を提案した。負債は短期的にほぼ絶対的に請求があるが、資産は不良化する。取れるのに取らないとか。社員、幹部の使い込みが発覚することもある。会社名義の不動産だけでも1㎡当たりの地価は50年で3倍以上になっている。これが事業承継税制を申請するには重要な数字になる。
2 創業者の奥様の退職金を未払金勘定に計上。これも注意が要る。既に損益計算書にも計上されている。実施した際に財源として何を取り崩すか。本当は計上する際に資産再評価をして評価益を出して同時にやると良かった。
3 遺言書の作成。兄弟は他人の始まり。今は理解を示し、仲の良い兄弟でも妻のプレッシャーが争う相続を引き起こす可能性がある。両親が存命中は穏やかな家族でも死亡するとどうなるか。
4 経営譲渡の際に登記が済ませてあるかどうか。
5 言い忘れたのは連帯保証人になっていないか、どうか。
 ほとんどは税理士さんの仕事になる。登記も司法書士さんになる。遺言書は当職で対応できる。創業者さんの心の琴線に触れる提案になったかどうか。
 最後の相談者は少し複雑な家庭で、高齢の両親との関係に悩んでおられた。既に司法書士が関与している。死亡した父の後添い(後妻)が認知症で施設入居中で、息子さんに成年後見人を付けてと迫られている。これが理解できないとのこと。先妻の息子さんと後妻は養子縁組していなかったと後悔していたが、姻族関係で4親等内なので法定後見の申し立ては可能。但し、申し立ての費用は申立人の負担とわかると絶句された。精神鑑定があると馬鹿にならない出費になる。
 高齢社会では、精神、肉体とも健全でないと地獄絵のような家族関係が見えてくる。法制(社会の仕組み)、出費、法的サービスの手続き、など知らないと誤解がぎくしゃくした関係をつくる。そんな意味でこのような相談会は社会的にも意義がある。ボランティアでも今後も2回相談員に応募しておいた。

 終了後は地下鉄原駅ギャラリーで風景写真展を見学。何と同窓の写真家だった。事務所に移動、19時からの岳連理事会に出席。岳連も一般社団法人化が日程に上がりつつある。本部ではすでに弁護士が選任されたらしい。設立手続きか、複式簿記の会計書類の作成が軌道に乗るまでか、何かに関与して協力したい。