会計制度に注目した投資視点?国際会計基準(IFRS)を適用した企業に注目 ― 2015/04/06
ZUU onlineから
国際会計基準(IFRS)を採用する企業がここへ来て急増中だ。この国際会計基準・IFRSとは、International Financial Reporting Standardsの略称で、外資系企業などではイファースなどと呼ばれている。これは国際会計基準審議会(ASB)によって策定が進められてきた国際的な会計基準である。
海外では多くの大手企業が当該会計基準に従って決算を行っており、国をまたいでビジネスを展開しても適正な会計、決算処理を行えるようになっている。日本でも2009年にこの会計方式導入強制義務化が叫ばれ一躍注目されたが、東日本大震災発生の影響などから無期延期の状態が続いている。
既存の国内会計基準と大きく異なる考え方
IFRSの適用で、会計に対する国内企業の発想は大きく変化しようとしている。最大の違いは、日本企業の会計基準は規則主義だが、IFRSは原則主義であることだ。日本の会計の場合、規則に書かれていることは遵守されるが、それ以外は規則にないとみなして法の抜け穴をついてくる企業も多い。
しかしIFRSでは、概念や解釈指針といったものが重視されることになるため、企業は自社の実態に即した個別の会計指針をあらかじめ決定して処理することになる。一見、自由度が高まるように考えられるが、監査人やステークホルダーが納得するような会計処理が求められることになり、企業の責任や負担は大きい。
IFRSの適用で売上げ大幅減も
実はこのIFRSの会計を導入することで、売上げが大幅減になる企業が増加している。これまで日本企業では、商品売買契約が成立すれば売上げにする、いわゆる総額方式を適用してきた。しかしこの新会計基準では、リスクをとらないビジネスをする業者は代理人とみなされ、手数料が売上げとして計上されることから売上げが激減するケースもでてくるのだ。
たとえば商社、百貨店、GMS、総合広告代理店などがこれに該当し、在庫リスクや代金の回収に失敗する信用リスクのない企業は代理店と見なされる可能性が高い。
実際、総合商社の双日 <2768> は2013年3月期にIFRSによる会計に移行したが、連結決算売上高は50%以上減少した。
また、先行して2012年3月期にIFRSを適用したJT <2914> は、物流事業の売上げが代理人取引扱いとなり、たばこ税も売上げから取り除かれるため、4兆円もの膨大な売上げを従来の会計方式より減少させる結果となっている。しかし、商社やJTなどがこうした売上げ減を考慮しても、IFRSによる会計基準に移行するには理由があるのだ。
のれん償却の廃止で利益が大幅上昇
JTは積極的にM&Aを仕掛けて、売上げと利益をインオーガニック戦略で短期間に拡大する企業として有名だが、同社は2007年に英国のたばこ会社、ギャラハー社を当時、2兆円超で買収している。その結果、翌会計年度の売上げは前年比35%弱、営業利益も30%弱増加し、増収増益を実現した。
しかしこの買収によるのれん代の償却費負担が急増し、2009年度末ののれん償却費は1,055億円強にまで膨れ上がることとなり、売上高6.6%増に対して営業利益はマイナス15.5%と利益圧迫につながっている。ところが、IFRSの適用により定期の償却がなくなるため、IFRS移行後のJTは、売上げこそ減らしたが、のれん償却が利益を圧迫するリスクからは開放されている。
その効果で営業利益が大幅に増加した。ただし、こののれん定期償却がなくなった代わりに、IFRSでは減損テストを年一回行うことで、のれん価値を再評価する必要がある。ここで減損が認められれば、毎年減損リスクが高まる点は注意が必要だろう。
IFRS適用企業は年内にも100社超へ
国内の既存会計視点からみると懸念点が多いように思われるIFRSだが、世界がひとつのルールやひとつのプロセスに収斂していくことにより、グローバル企業は同一会計基準で世界の事業所や子会社の経営を比較することが可能となり、経営効率化には大きな利点となる。
また世界共通基準の財務諸表を公開することにより、海外からの資金調達の円滑化を図ることも可能となる。よりM&Aも実現しやすくなるというメリットがあるのだ。
これらのメリットを踏まえて、日立製作所 <6501> 、ホンダ <7267> などIFRSを任意適用する企業が急増している。JXホールディングス <5020> や日本電産 <6594> 、東芝 <6502> などの優良企業も17年3月期をめどに、IFRSの任意適用を予定している。今後、移行する企業はますます増えることが予想され、国内企業も本格的にIFRSを適用する時代が到来している。
今後IFRSを適用するM&A積極企業が投資対象に
株式投資という視点で見た場合、これまでもM&Aに積極的でありながら、のれんの償却に苦しんできた既出のJTのような会社が、IFRSを適用するタイミングは、株式投資としては大きな妙味ある。のれんの定期償却がなくなった分が確実に利益として企業業績を押し上げるからだ。
したがって、IFRSを適用すると発表した企業の有価証券報告書を眺め、のれんの償却が大きいと判断できる場合は、有望な投資対象とみなすことができる。会計制度に注目した新たな投資視点といえるだろう。(ZUU online編集部)
以上
googleアラートにヒットした記事。キーワードの国際会計基準にヒットする頻度が増えてきた。あそこも、ここも、と知られてどっと採用企業が増加するだろう。今はさざなみだが、大きなうねりとなるに違いない。今日からキーワードも独立して立てた。
国際会計基準(IFRS)を採用する企業がここへ来て急増中だ。この国際会計基準・IFRSとは、International Financial Reporting Standardsの略称で、外資系企業などではイファースなどと呼ばれている。これは国際会計基準審議会(ASB)によって策定が進められてきた国際的な会計基準である。
海外では多くの大手企業が当該会計基準に従って決算を行っており、国をまたいでビジネスを展開しても適正な会計、決算処理を行えるようになっている。日本でも2009年にこの会計方式導入強制義務化が叫ばれ一躍注目されたが、東日本大震災発生の影響などから無期延期の状態が続いている。
既存の国内会計基準と大きく異なる考え方
IFRSの適用で、会計に対する国内企業の発想は大きく変化しようとしている。最大の違いは、日本企業の会計基準は規則主義だが、IFRSは原則主義であることだ。日本の会計の場合、規則に書かれていることは遵守されるが、それ以外は規則にないとみなして法の抜け穴をついてくる企業も多い。
しかしIFRSでは、概念や解釈指針といったものが重視されることになるため、企業は自社の実態に即した個別の会計指針をあらかじめ決定して処理することになる。一見、自由度が高まるように考えられるが、監査人やステークホルダーが納得するような会計処理が求められることになり、企業の責任や負担は大きい。
IFRSの適用で売上げ大幅減も
実はこのIFRSの会計を導入することで、売上げが大幅減になる企業が増加している。これまで日本企業では、商品売買契約が成立すれば売上げにする、いわゆる総額方式を適用してきた。しかしこの新会計基準では、リスクをとらないビジネスをする業者は代理人とみなされ、手数料が売上げとして計上されることから売上げが激減するケースもでてくるのだ。
たとえば商社、百貨店、GMS、総合広告代理店などがこれに該当し、在庫リスクや代金の回収に失敗する信用リスクのない企業は代理店と見なされる可能性が高い。
実際、総合商社の双日 <2768> は2013年3月期にIFRSによる会計に移行したが、連結決算売上高は50%以上減少した。
また、先行して2012年3月期にIFRSを適用したJT <2914> は、物流事業の売上げが代理人取引扱いとなり、たばこ税も売上げから取り除かれるため、4兆円もの膨大な売上げを従来の会計方式より減少させる結果となっている。しかし、商社やJTなどがこうした売上げ減を考慮しても、IFRSによる会計基準に移行するには理由があるのだ。
のれん償却の廃止で利益が大幅上昇
JTは積極的にM&Aを仕掛けて、売上げと利益をインオーガニック戦略で短期間に拡大する企業として有名だが、同社は2007年に英国のたばこ会社、ギャラハー社を当時、2兆円超で買収している。その結果、翌会計年度の売上げは前年比35%弱、営業利益も30%弱増加し、増収増益を実現した。
しかしこの買収によるのれん代の償却費負担が急増し、2009年度末ののれん償却費は1,055億円強にまで膨れ上がることとなり、売上高6.6%増に対して営業利益はマイナス15.5%と利益圧迫につながっている。ところが、IFRSの適用により定期の償却がなくなるため、IFRS移行後のJTは、売上げこそ減らしたが、のれん償却が利益を圧迫するリスクからは開放されている。
その効果で営業利益が大幅に増加した。ただし、こののれん定期償却がなくなった代わりに、IFRSでは減損テストを年一回行うことで、のれん価値を再評価する必要がある。ここで減損が認められれば、毎年減損リスクが高まる点は注意が必要だろう。
IFRS適用企業は年内にも100社超へ
国内の既存会計視点からみると懸念点が多いように思われるIFRSだが、世界がひとつのルールやひとつのプロセスに収斂していくことにより、グローバル企業は同一会計基準で世界の事業所や子会社の経営を比較することが可能となり、経営効率化には大きな利点となる。
また世界共通基準の財務諸表を公開することにより、海外からの資金調達の円滑化を図ることも可能となる。よりM&Aも実現しやすくなるというメリットがあるのだ。
これらのメリットを踏まえて、日立製作所 <6501> 、ホンダ <7267> などIFRSを任意適用する企業が急増している。JXホールディングス <5020> や日本電産 <6594> 、東芝 <6502> などの優良企業も17年3月期をめどに、IFRSの任意適用を予定している。今後、移行する企業はますます増えることが予想され、国内企業も本格的にIFRSを適用する時代が到来している。
今後IFRSを適用するM&A積極企業が投資対象に
株式投資という視点で見た場合、これまでもM&Aに積極的でありながら、のれんの償却に苦しんできた既出のJTのような会社が、IFRSを適用するタイミングは、株式投資としては大きな妙味ある。のれんの定期償却がなくなった分が確実に利益として企業業績を押し上げるからだ。
したがって、IFRSを適用すると発表した企業の有価証券報告書を眺め、のれんの償却が大きいと判断できる場合は、有望な投資対象とみなすことができる。会計制度に注目した新たな投資視点といえるだろう。(ZUU online編集部)
以上
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