長谷部恭男『憲法の良識「国のかたち」を壊さない仕組み』を読む2018/06/05

 名古屋・丸善で購入。
 長谷部恭男著 2018.4.15 朝日新書
◎目次
【はじめに】
【序 章】九条をめぐる不思議な議論
【第1章】憲法とは何だろうか
【第2章】プロジェクトとしての立憲主義
【第3章】改憲問題の本質とは何だろうか
【第4章】「緊急事態条項」のあぶない実態
【第5章】平和主義は単純じゃない
【第6章】民主主義の核心とは何だろうか
【第7章】憲法と戦争の意外な関係
【終 章】個人的体験からつかんだもの
【おわりに】
アマゾンのレビューで「護憲派のエース(憲法学者)の唯我独尊的主張」が一番同意する。
2018年5月16日
形式: 新書
 憲法学者の中でたぶん一番有名な学者は、長谷部恭男教授であろう。内容は、護憲派の主張がいかに正しいか、これでもかという具合に主張している。異論は絶対許さない、我々が、絶対正しい、我々こそが「正義」である、という主張が随所に感じられる。反対派の意見は、まったく一向にされていない。
 「平和構築」を専門とする国際政治学者の篠田英朗教授(東京外国語大学)が「長谷部恭男教授の「憲法学者=知的指導者論」に驚愕する」に本書のレビューが書かれているのであるが、その内容に同感である。
 篠田教授も、長谷部教授が、本書で「私がよく使う比喩ですが、私にはアイスクリームを食べる権利があります。しかし健康のことを考えて、アイスクリームは、食べるとしても一日一個だけにするというきまりを自分でつくっているとしましょう。・・・それと同様、国際法上は、日本には集団的自衛権があることになっている。
 しかし、自国の安全と国際の平和のことを考えて、日本としては憲法で、個別的自衛権しか行使しないことにしている、ということに何の矛盾もありません。(108-109頁)」と書いていることに疑問を呈しているが、私も、この良く使う比喩の意味が良く理解できない。
 安保法制に反対で、ガチガチの護憲派の方のためだけに(〇〇用ー自粛)書かれた本である。
 なお、本書で一番面白かったのは、本書の最後の方の「戦争と憲法」と「個人的体験」について書かれた章である。ただし、「戦争と憲法」についても、内容は、憲法学の内容に限られていて、かなり狭い範囲で論じられているのが珠に傷である。
 私は、昔、長谷部教授の『憲法と平和を問い直す』(ちくま新書)により、憲法学が単なる条文解釈学ではないことを知り、大変興味深く読んだのであるが、今回の本は、とても残念である。
以上
 本書の核心は「第4章 「緊急事態条項」のあぶない実態」ではないか。これこそが、ワイマール憲法からヒトラー独裁が生まれた。同氏のそれだけをテーマにした『ナチスの「手口」と緊急事態条項 (集英社新書)』も読んだ。
 あるサイトから抜粋すると
「福島議員「だから、これはナチス・ドイツが、まさに内閣限りで、基本的人権を制限できるという国防授権法を通して独裁政権を作ってしまったのと同様に、緊急事態宣言条項も、内閣限りで、バンバン、バンバン、バンバンと、基本的人権を制限できる。ナチス・ドイツはそのあげく、あのアウシュビッツまで行ってしまったと」」と警戒している。実際にはアウシュビッツまでは行っていないそうだ。今では研究すらできないとか。
 結局長谷部先生の本の主張は安倍さんをヒトラーになぞらえているのである。本書の目次を読んでも、日米安保条約との関係は書かれていない。
 それに、中国、北朝鮮、韓国、ロシアとはすでに国際紛争の状態にあるのに危機意識もない。純粋な憲法学の立場だけから書かれている。だからアマゾンのレビューも賛否が分かれている。憲法のような高度な学問に素人は口を出すな、とでも言いたいのだろう。文章もみな天邪鬼な書き方である。

アゴラから
長谷部恭男教授の「憲法学者=知的指導者」論に驚嘆する
http://agora-web.jp/archives/2032313.html
この本で長谷部教授が主張していることは、以下のように要約されるように見える。

1. 憲法学者以外の者は、憲法について語るべきではない。
2. 憲法学者は、「知的指導者」であり万能の「医者」である。
3. 憲法学者が卓越しているのは「良識」を持っているからである。

・・・・首肯する。ついに憲法学者のボロが出たと思う。今や世界一を争うトヨタ自動車も、石田退三社長のころは、財界活動はせず、当時の商法の権威に指導を仰ぎ、定款に外国籍は役員になれない、という排他的な条項を入れて、資本の自由化に備えて経営基盤を固めた。蛸壺経営とも揶揄された。
 憲法学者もまさに蛸壺の蛸であって、世界が見えていない。これでは知的指導者と仰ぐわけにはいかない。
 税理士で弁護士の某氏のブログを読むと、税法の専門家の税理士の方が難しいそうだ。弁護士が主に扱う民法でも刑法でも税法ほどの改正はない。改正するたびに税理士は対応せねばならない。この視点で見ると、憲法学者は楽なものだ。若いころに担当教授に仕えて、護憲を唱えれば、一生同じテキストで食っていける。平和だあ、護憲だあ、と言っておればメディアにも露出して本も書かせてくれる。苦労が足りないのかも知れません。

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