研修ー消費者法の概要と雑感2010/11/04

 第2回目という東京の日行連主催の全国研修がインターネットで各県の会に配信されて行われた。
 プログラムは第一時限目消費者法の概要ー消費者庁の発足による行政の変化第二時限目会社の解散・清算制度第三時限目建設請負契約のリスクと帰責についてである。

 ここでは消費者法について学んだことをノートしておく。
講師:消費者庁 総務課課長補佐 十川雅彦氏

 消費者庁は2009年9月1日に発足した新しい消費者の視点に立った行政を推進する機関である。

消費者安全法
  消費者事故
    ↓
  事実認定
    ↓
  注意喚起→内閣総理大臣→販売中止

    司法を経ずに強い権限が行使される

従来は
   独禁法→ 公正取引委員会→ 裁判所へ申し立て(司法)

景品表示法
   1.不当な表示の禁止   二重価格表示が問題→通常価格の何割引という表示はいつも同じなのに→誤認させる
   2.過大な景品類の禁止

一例として最近報道のあった焼肉屋のカルビの呼称の件
ロースとはもも肉のこと→業界では材料の名前≠ロースそのものではない→優良誤認

ブラジル産鶏肉を国産鶏肉と偽る→優良誤認

国産牛肉を飛騨牛と偽装した事件も記憶に新しい。これも優良誤認

食品衛生法
 アレルギー物質の表示→鶏卵への喚起→抗生物質を含まないと宣伝するのは違法

健康増進法
 食薬区分 第二条 第四条
 特保  食品は効果効能は書かないこと。但し特別用途食品は許可を得て書いていい。
 一例 エコナ問題
  許可されたが販売中止した事件。当時は取り消し、見直しの規定がなかった。
JAS法
 食品表示偽装

 JAS法 不正競争防止法 刑法

特定商取引法
 クーリングオフ
 特商法の改正
  ①すべての商品は対象になる→抜け穴防止
  ②再勧誘禁止「もういらないよ」と意思表示する

消費者センターと連携して保護行政をする

 感想雑感
 比較的若いころから関心を持っていた分野であり、事務所の書棚を見ても関連書籍は4冊があった。

1970年『盗奪の論理』 大門一樹 サイマル出版
1971年『消費者手帖』 日本消費者連盟 三一書房
1971年『消費者問題』 野村かつ子、青山三千子、山手 茂 亜紀書房
1972年『消費者問題入門』 安部喜三  日経文庫 日本経済新聞社

 消費者問題というと若いころはクルマ製造会社にいたからアメリカの弁護士ラルフ・ネーダー(1934~)の活躍が脳裏に刻まれている。改めて検索。以下はコピー。
 「1965年、彼は『どんなスピードでも自動車は危険だ:アメリカの自動車に仕組まれた危険』Unsafe at Any Speed:The Designed-In Dangers of the American Automobileという乗用車の欠陥を指摘する本を出版し全米に衝撃を与えた。」が全世界に有名にしたことだろう。

続いて
「ともあれアメリカ政府はネーダーの本を受ける形で自動車と交通の安全に関する法律や部署を設置し、ネーダーの告発は勝利に終わった。
 彼はその後も自動車の安全を監視する組織を運営している。さらにネーダーの運動に刺激された幾百の若い消費者運動家たち(ネーダーズ・レイダーズ、「ネーダー突撃隊」)とともにさまざまな方面の消費者保護運動に携わり、政府や産業界の環境、福祉、健康、政治腐敗などの問題点を次々に告発した。
 1971年にはこれらを傘下におさめる上部組織であるNGO「パブリック・シチズン」を設立、現在では15万人の会員を擁し政府や議会、産業界などを調査・監視しているほか、国民の健康を守ったり消費者の権利を保障したりするためのさまざまな法案を通したり政府機関の設立に寄与した。」

 日本ではこのような消費者の側に立った団体は機能しなかったように思う。しかし一例として挙げると同様に検索から

 1969年以降、ラルフ・ネーダーが主導しアメリカで社会問題になっていた「欠陥車問題」に影響され、日本でも同様に欠陥車糾弾の動きが生じた。この種の動きを見せた団体に「日本自動車ユーザーユニオン」があり、当時のベストセラーカーであった「N360」に操縦安定性の面で重大な欠陥があると指摘、未必の故意による殺人罪で本田宗一郎を東京地方検察庁に告訴した。

この事件に関して1973年の国会審議で日本共産党が質問中に示した数字として、1968年から1970年の3年間で、被害者362名(うち、死亡56名、重傷106名、軽傷137名、物損14件)というものがある[3]。

これによるイメージダウンもあって、発売以来3年間国内販売首位を誇った「N360」の人気は下がり、1971年には後継モデルの「ライフ」が発売されたこともあって、1972年に販売を終えた。

 捜査の結果、本田宗一郎は不起訴となった。またホンダは法外な示談金を要求したユーザーユニオンを恐喝で告訴し、ユーザーユニオンの代表者2名が恐喝の疑いで東京地方検察庁特別捜査部に逮捕された。結果2名は有罪となったが、ホンダとの交渉に関する部分は一審では有罪となったものの控訴審では無罪となり、上告審でも控訴審での判断が維持されている。結局判決が確定したのは1987年1月のことであり、十数年の年月を要した。」

その自動車ユーザーユニオンで活躍した安部治夫弁護士は

 1987年1月23日、最高裁の第2小法廷は[賠償交渉に名を借りた期を恐喝]と認定、上告を棄却する決定。
 法務省刑事局のエリート官僚を退官後、67年弁護士に転身。70年から欠陥車問題に取り組み、自動車製造、販売会社に対抗して自動車の欠陥を指摘してクレーム処理を行うことにより自動車のユーザーの利益を擁護することを目的とする「日本自動車ユーザーユニオン」と称する消費者団体を設立。監事兼顧問弁護士に就任した。

 安倍弁護士は有罪確定で第二東京弁護士会を退会したが、中央更生保護審査会は昭和天皇が亡くなられた特別恩赦で懲役・執行猶予期間が減刑。執行猶予期間終了後、第二東京弁護士会に再登録した。

 結局アメリカで大問題となったトヨタの暴走事故、発進を見ても次々と新たなリコール車が出て安全な車を作るという点に関して何も解決していない。当時のマスコミは欠陥車と書いたがメーカー側からはリコール車(=回収車)という呼称になっている。
 今日の消費者安全法を車に適用すると
              ↓      
 事故発生→事実認定→ここが問題だ→個人には原因調査は無理→中立のサービス機関がないので系列販売店かJAFに持ち込むことになるだろう。そうするとこっそり部品交換したり、プログラムを書き換えたりして発覚されない可能性がある。これまでもあったと思う。
              ↓
 この法律がメーカー優位の社会を変えるきっかけになるでしょうか。
私たち消費者は用意周到なメーカーに対処する知恵を持っていないように思う。
 メーカーは国内では生産、販売、世界では電子、環境などの技術、外国為替=円高、外国のうち先進国とはライバルがいるし、中進国とは原価競争がある。新たに消費者の安全との取り組みが始まっている。
 
 大変な時代である。しかし、すでにスバルは衝突回避のクルマを開発している。これは安全につながるだろう。 
 食品やクルマに限らず安全な商品こそ企業が生き残ることができる最低の条件である。

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