研修ー建設請負契約のリスクと帰責について2010/11/05

講師:笠井 修氏     中央大学法科大学院教授

 かつて30年以上も前に建設会社に勤務していたころ建設請負は「請け負け」だと言われたことがあった。当時はインフレの時代で契約すると工事中に資材が値上がりして採算が悪くなった。人夫賃も上がった。だからといって契約金額を値上げすることもできなかったのである。採算割れがあっても資金繰りの都合で受注することもあった。
 
 今日はその建設請負契約についての理論的な講義を大学の先生から直接受講した。検索でぐぐると同名の書籍がヒット。著者も同じだ。

契約のリスクとは何か

 契約は申込みと承諾で成立
   内容の破綻  言葉の解釈で行き違いが生じる(理解の違い)

 請負契約には債務不履行がない。民法上請負は仕事の完成義務がある。だから赤字でもやる(履行)ことになる。しかし、契約で想定していない天変地異の損壊があればそれはリスクになる。

  不可抗力+事情変更→コントロール不能→契約がうまくいかない
                 ↓
             リスク負担は
                 ↓
 発注者側へ泣きついた→救済措置→設計変更で赤字を補填

 発注者側でもリスクを分配してもらう→約款が整備された
 今では天候上のリスクは発注者側に移行している
 
 但し民間工事の瑕疵担保に関して→発注者は消費者である→約款には消費者保護の観点が欠けているという問題があった

危険領域という考え方
不能を生じた原因が債権者(注文者または発注者)の領域に属せば、受領不能として反対給付債権が消滅する説

西欧先進国の例

請負  「仕事の完成」とはどのようなことか

 ・瑕疵のない仕事の完成   債務不履行責任  商品売買

 ・瑕疵を伴いうる仕事の完成→瑕疵が無くなるまでの契約
    報酬請求の問題がある  予定工程を終えた完成→請求発生
    →瑕疵担保責任
  
 ・仕事の完成の規範的要件化

新しい建設請負 リスクの分配から共有へ
 
 PPC=プロジェクトパートナリングとは

 日本の系列にヒントを得た

   情報共有     分配の割合を決めておく
   信頼性の醸成  チームを作る→コミュニケーションをはかる

いいこと尽くめではない
  ターゲットコスト(目標価格)=公共工事=納税者の目が光る
  保険会社がリスク判断に困る
  知財関係が決まらない

 古い時代を背景にした民法では合わなくなってきている

    売買型の契約には当てはまる

    役務提供型(サービス)には当てはまらない
        536条を無理に適用してきた
        534条の危険負担はドイツに学んだ

 この結果建設請負業者にはリスクが多かった

 完全な契約書を作っても防止できないことがある

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