アメリカは敵と味方を取り違える天才だ2018/12/27

 FBで江崎道朗『 知りたくないではすまされない ニュースの裏側を見抜くためにこれだけは学んでおきたいこと』という本を知った。其の中の表記の言葉が引っかかった。目次の第7章の言葉である。
 ググって見ると、意外にもヒットする。最初はブログ「大上主税の視聴覚室」がヒットした。実は「正論」2014年5月号に江崎氏が書いた論考であった。

 ちょっとコピペすると
 「「アメリカは敵と味方を間違える天才だ」。東南アジアのある外務大臣経験者の言葉だそうだが、安倍晋三首相の靖国神社参拝について「失望した」と表明。
 同盟国なのに何故アメリカは中国の味方をするのか? (アメリカを代表する新聞)ニューヨーク・タイムズ紙は、安倍首相を「ナショナリスト」と規定。
 日本では(ナショナリストは)「愛国者」と訳されるが、アメリカの政治用語では「アメリカの覇権に立ち向かう危険人物」を意味するらしい。評論家の江崎道朗氏の(新)連載「SEIRON時評」。

 アメリカはこれまで膨大な資金を投じて世界各国の内情を徹底的に「調査」してきたが、最近、この対外調査費を大幅に削ったらしい。その結果、アメリカ政府の調査能力は低下し、今やマスコミ報道を見て外交政策を判断するようになりつつある、と江崎氏の掴んだ情報。アメリカ外交の指導力の低下は、バラク・オバマ大統領の資質の問題だけではないらしい。
 戦前も(アメリカは)日中戦争を始めたのは日本だと勘違い(!)し、中国やソ連と組んで日本を追い詰めていった。その結果、中国大陸を失う大失策を犯し、共産主義政権が誕生し、朝鮮戦争が勃発した。そのときになって初めて(アメリカは)「我々は、敵を間違えた」と気付いたらしいが……《勘違い》で、原爆を二発も落とされたり、民間人(主要都市)への無差別爆撃(大虐殺)をされたら、堪ったものではない。……アメリカはまた《誤解》しているのか?」

 ・・・・うーん、この歴史認識はおかしい。勘違いではない。
 日露戦争の戦いぶりで日本の国力を畏怖した結果、アメリカは50年もかけたオレンジ計画で日本を追い詰めてきた。真珠湾攻撃も偶発ではない。アメリカ側の挑発に乗っただけである。日本恐し、ゆえに共産主義でも、原爆投下でも日本を殲滅するためなら何でも良かったのである。

藤原正彦『国家と教養』を読む2018/12/27

 ベストセラーになった『国家の品格』は買わなかった。目次を拾うと、先輩にあたる数学者の岡潔の著作のオマージュと思ったからだ。『春宵十話』や小林秀雄との対話『人間の建設』など良かった。情緒という言葉が頻発するのはそのためだ。
 こうした先駆する著作を読んで藤原氏なりの見解を加えた。それが『国家の品格』になった。ベストセラーになったのは氏が名うてのエッセイストであったからだ。
 さて本書はどうか。第六章の国家と教養の中で次の項目を挙げて展開しています。教養の4本柱として
 1人文的教養
 2社会的教養
 3科学的教養
 4大衆文化教養
 を挙げる。中でも4の大衆文化教養を挙げたのは新鮮です。一般には教養レベルの低いジャンルと看做されているからです。実はこの見解は故渡部昇一氏の教養と共通するものがあります。渡部氏の書斎を動画で見ましたが、古今東西の珍本、きこう本に加えて、講談本や大衆が読んで来た古書や古雑誌が蒐集されていたのには驚きました。
 非常に長い評論活動の糧になったのでしょう。知的生産の源泉は専門の英語ですが、大衆の支持を受けたのは案外大衆文化教養だったように思われます。英語学だけなら泰斗で終わっていた。
 クラシック音楽観賞は教養人の証明ですが、じゃあ、歌謡曲や演歌を楽しむのは何の教養にもならないのか、というとそうではないと思います。北島三郎さんはフランスはシャンソン、アメリカはジャズ、ブルース、イタリアはカンツォーネ、日本には演歌があるとか言われた。
 日本の演歌や歌謡曲も古来の歌謡を西洋音楽の曲に乗せた。そして映像文化の普及で大衆に広まった。歌謡曲や演歌の作詞を見ても教養なくしては書けないのです。最期は読書のすすめです。
 藤原氏の父の新田次郎は『強力伝』(ごうりきでん)で直木賞を受賞した作家です。母は『流れる星は生きている』の藤原ていです。文がうまいはずです。