アミューズトラベル社の廃業届について2012/12/11

 12/10付け、WEB版朝日新聞の見出しから「アミューズトラベル、廃業前に登録取り消し 観光庁方針」と出ている。記事本文は「中国・万里の長城で日本人客3人が遭難死したツアーを主催したアミューズトラベル(東京都)について、観光庁は、旅行業の登録を取り消す方針を決め、10日、同社に通知した。同社は20日付の廃業を表明。観光庁は18日の同社の聴聞を経て、廃業前に登録を取り消したい考えだ。

 登録取り消しの処分が出ると営業ができなくなり、会社も板井克己社長ら役員も5年間、新たな登録ができない。」
 一方、12/5付けでは
「【堀川勝元、工藤隆治】中国の「万里の長城」で日本人客3人が遭難死したツアーを主催したアミューズトラベル(東京都)が、廃業を決めたことが4日、同社への取材でわかった。社会的信用を失い、事業継続は困難と判断した。会社は残し、遺族への補償や観光庁の事故調査に対応する。

 アミューズ社は2009年、北海道・トムラウシ山で8人が遭難死したツアーも主催していた。板垣純一総務部課長は「2度目の事故で社会的信用を失った。今後さらに落ち込みが予想される。社会的な責任を取る意味もある」と話した。

 アミューズ社は3日、旅行業の廃止届を国土交通省に郵送した。20日付で廃業する予定で、全従業員約50人を解雇する。板井克己社長を含む役員3人は残り、遺族に廃業や今後の対応を説明する。「ご遺族には真摯(しんし)に責任を果たしたい」としている。従業員には廃業を伝えたという。 」

とあり、社会的反響の大きかった同社の事実上の倒産が判明した。

 旅行会社は国土交通省への届出と許認可で開業できる。財務内容の審査があるので、簡単には行かないが、登録の手続きだけで営業されている。したがって、遭難事故などのトラブルなどを回避できれば、将来性はあったと思われる。

国土交通省のHPから
http://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/kikaku_kankou/kankou/travel.html
1.旅行業の登録区分
 旅行業を行うには旅行業法に基づき、登録を受ける必要があります。
 旅行業者等は、業務の範囲により、第1種旅行業者、第2種旅行業者、第3種旅行業者、旅行業者代理業者に区分され、種別により以下のように登録行政庁が異なります。
2.第1種旅行業の申請・届出について
  (第2種・第3種旅行業、旅行業者代理業については所管の登録行政庁(都県)にご確認ください。)
 ・ 書類は主たる営業所の所在地を管轄する地方運輸局に提出してください。
 ・ 届出・報告については、郵送でも可能です。その際は返信用封筒に切手を添付のうえ同封してください。

 問題の廃止届とは
事業の廃止届
 旅行業者は、その事業を廃止し、又は事業の全部を譲渡したときは、その日から30日以内に廃止届を提出してください。
 また、旅行業者たる法人が合併により消滅したときは、その業務を執行する役員であった者は、その日から30日以内に廃止届(正・副・控各1部、計3部)を提出してください。
  【事業廃止届出書】 はダウンロードでプリントする。廃止理由を記載するだけの簡単な様式である。

 ではなぜ、旅行業法による取消し処分をしたいのか。
 11/30付けのWEB版毎日新聞によると「中国遭難事故:旅行業者への行政指導不十分だった…観光庁
毎日新聞 2012年11月30日 20時18分(最終更新 11月30日 23時18分)
 中国・万里の長城で日本人観光客3人が死亡した遭難事故で、観光庁の検証チームは30日、ツアーを主催した「アミューズトラベル」(東京都千代田区)への行政指導が不十分だったとする調査結果を発表した。同社は8人の死者を出した09年の北海道・トムラウシ山の遭難事故も主催し、その行政指導が適切だったかどうか疑問視する声が出ていた。同庁は検証結果を受け、抜き打ち検査の実施や処分基準強化などを検討する。

 検証チームは、当時担当した幹部や職員から事情を聴いた。その結果▽最初の立ち入り検査がトムラウシの事故から約4カ月も経過▽51日間の業務停止処分後も継続的に指導する方針を決定したが、処分後の立ち入りは2回だけ▽抜き打ち検査はなく、ア社から提出された書類のみで検査−−などの問題点が見つかった。

 観光庁は管轄する旅行業者726社に対し約10年に1回の割合でしか、立ち入り検査を実施していないことも分かった。同庁は今回の結果を受け態勢強化を図り、抜き打ちも含めた検査回数の増加も検討する。また、違反業者には、処分後も期間や立ち入り検査する頻度を見直し、監督を強化するよう改めるという。【桐野耕一】」

 とあり、山岳遭難史上の大きな問題を起したア社を見逃した甘さを指摘され、営業を継続させた観光庁のメンツもあると思われる。要するに旅行会社として営業できないようにするしかなかった。今後は、容赦なく会社をつぶすこともありますというメッセージだ。廃業届を受理すれば、営業ノウハウのある役員らが、再び、新会社を設立して再開することも可能だった。その前途に待ったをかけたカタチだ。
 したがって、現在山岳の商品を扱う旅行会社は、遭難対策が今までに増して厳しくなると思われる。
 一方、山岳商品を購入する利用者側はどうするのか?
 フグは食いたし、命は惜しい。確りしたリーダーを選べる会社であり、個々のリーダーの情報公開も必要である。リーダーの資質、知見を高めさせる研修も必要である。出発前に計画をチエックして自分の能力に合うかどうかの見極めも要る。いざというときどこでも寝られるようにしておくことだ。充分な食料と温かい衣服(ツエルトも含む)があれば救助を待つことも出来る。