成年後見人の身上監護とは?2011/09/02

 Googleアラートで成年後見をキーワードとして情報収集している。今日ヒットした中に弁護士ドットコムのみんなの相談がある。
ある女性が成年後見について相談した弁護士の回答が興味深いので部分的にコピーする。

相談は省略

「裁判所が選任する後見人に事前に人格テストをすることはできません。被成年後見人の身上監護は後見人の仕事ではなく、家族の仕事として残ります。後見人の仕事は財産管理だけであり、人格は問題外です。」

とあり、相談者はお礼に

「介護や生活の世話等の身上監護は家族の役割という事は当然承知しています。
父の場合、資産に関わる交渉事が後見人に移行される為、これまでの経過や事情を説明し引き継ぎたいと思っているのですが、事前には出来ないという事なら選任後に会う事は可能ですか?
家裁が選任した弁護士は信用出来、安心と理解してよいのでしょうか?
人格は関係ないというお言葉はとても驚きました。
財産管理を託すからこそ、お人柄は大事と考えるのは法の世界では通用しないのでしょうか?」と述べている。

ごもっともな不安である。医者でも弁護士でも国家試験にパスすればなれる。その中に人格のテストまではない。人格は第一は家庭で、次は職場で形成されて行くものだ。そこは無いものねだりということ。

 私が引っかかったのは「身上監護は家族の仕事」と言い切っていることだ。身上監護にも事実行為と法律行為があり、成年後見人の仕事は事実行為はしないで法律行為だけである。以上は研修で学んだこと。
 この弁護士の回答は割り切りすぎて、配慮が足りない気がする。

 後見実務相談室というサイトにも
Q成年後見人が行う身上監護とは?.
A 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないと規定されています(身上配慮義務、民法858条)。身上配慮義務には大きく分けて身上監護と財産管理があり、ここでは身上監護について説明します。
 身上監護には事実行為と法律行為があり、成年後見人の身上監護には事実行為は含まれません。
 つまり、成年被後見人への実際の介護行為を成年後見人が行うのではなく、成年後見人が介護サービス提供事業者等と契約し、適切なサービスが供給されるよう手配することが成年後見人の仕事となります。
 また、契約締結後もそのサービスが適正になされているか、サービスの過不足はないか、在宅での生活に無理はないか、施設入所にあたっては収入・支出、資産の状況から本人に合った施設はどこか、など継続的に本人を支えていく必要があります。そのためには福祉や医療の関係者と連携し、本人の日常生活に関心を持ち続けていくことが大切となります。 .

 相談の日時は8/29でしたが9/2の朝日新聞、中日新聞朝刊の社会面には被後見人の財産を横領した名古屋の弁護士Hの名地裁公判が9/1あったことを報道している。Hは「流用しても、返せばいいだろうと思っていた」(中日)と心境を話したという。他人のカネには手をつけない、という社会一般の掟は知らなかったと見える。被害者の家族には1600万円が支払われた(朝日)そうなので民事責任は果たしたが信用は著しく傷ついた。
 おそらく相談者もこんな報道を見聞しているから心配なのだろう。H弁護士は「弁護士になったことを喜んでくれた父親に一度は法定に立つ姿を見せたかったが、こんな形で申し訳ない」と後悔している。根っからの悪人ではない。人間の弱さである。回答した弁護士もこの事件を知らないはずはないから「人格は関係ない」と言い切ったのかな。