経理課長による8億円着服事件の背景2011/12/12

 マスコミ各社はイオン保険サービスの課長による8億円着服を一斉に報じた。
 イオングループの「イオン保険サービス」が10日に会見し、元経理課長が約8億円を着服していたと発表した。
 手口は会社名義の預金口座を無断で開設し、正規の口座から送金して資金移動に見せかける単純な方法だった。しかし、預金口座の残高証明書を試算表に必ず添付するなどして確認していけば防止できたはず。何でこんな多額の資金に手を出したのか。
 2008年にもスギ薬局の取締役経理部長が5億7000万円を横領していた事件が明るみに出ました。これも残高を改竄する手口で不正を働いていた。
 どちらも商品先物取引に流用していた。今回の事件の年齢は39歳であったがスギ薬局の場合も40代半ばだったと記憶している。

 カネ=会計の知識はあっても相場の知識と経験がないと簡単にだまされる。自分は一流会社のエリート、会計にも強いなんて世間知らずはずるずると引き込まれて他人=会社のカネに手をつけるきっかけになる。

 株式の信用取引で3倍、成年後見で横領したある弁護士が引っかかったFXは10倍、商品売買も同じくらいで梃子の原理で儲けも大きいが損も大きい。博打である。
 商品先物取引会社に勤めていた友人の話では「儲かったお客を利益を引き出したままにさせますか」と暗示をかけるのだ。つまり、あの手この手でお客を相場に誘うのが仕事なのである。そして資金を相場に注ぎ込ませる。
 商品の供給者は必ず買い手=資金の出し手を必要としている。商品の需給に応じて絶えず、先物で売っておく。売った価格以上に値上がりすると供給者の損になる。素人は大抵、買って値下がりして売るから損をさせられる。
 株式相場も同じ仕掛けである。株式の発行元の企業いわゆる上場企業は株式の買い手があって初めて資金調達が可能である。こちらはただの紙切れ=今は企業情報に価値がついて市場で売買される。だから買った人もすぐに売り手に回ることになる。
 相場は非常に多くの人間の欲望や思惑、インサイダーなどが絡んで錯綜している。簡単に儲かるものでは絶対にない。

 我々は一般的に消費者である。買うことには慣れているが売ることには慣れていない。社員として売ることはあるが自分のカネではない。資本力のある大手商社でも相場で大きな穴を空けている。

 自分の資金力の範囲内で相場を楽しむ程度ならば社会勉強になる。件の経理幹部も恐らく最初はおずおずと始めただろう。しかし、商品先物売買の営業社員はあの手この手で巧みに語りかけるだろう。損を重ねるほどむきになる。タコ糸とカネは出し切るなという金言もある。
 将来性があり、家庭のある若い世代はよほど用心深く取り組むべきである。会社での権限が上位にある人ほど誘惑も多い。不正防止のための組織の牽制も必要であるがまずは資本主義社会に生きるからくりを知っておきたいものである。

 今日もオリンパスの株価が上がっている。上場維持の思惑であろう。実はもう空売りがつみあがっていて新規売りはできない。安い価格帯で空売りした人は気が気でないはずだ。踏み上げ相場の前兆だろうか。悲観が楽観に変わると一斉に買われる。空売りの人はすぐに買い戻さねば損が膨らむ。追証もかかる。素人は大怪我をすることになる。