中国、またまた禁じ手。銀行の預金準備率を0・5%引き下げ 市中に流れる3兆円は太子党企業の倒産防止が理由では?2015/02/05

宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015) 2月5日(木曜日)
    通巻第4457号 から転載
中国の中央銀行(中国人民銀行)は預金準備率を二年九ケ月ぶりに引き下げ、本日実行する。
 0・5%の引き下げは銀行の自己資本率を低め、準備金の割合を下げることであり、つまり各銀行はそれだけ貸し付けの余裕ができる。表向きの理由は旧正月をひかえて、資金需要がのびるためとしている。
 
 しかし、倒産が射程に入ったいくつかの企業のうちでも、太子党関係者が経営にからんで悲鳴をあげているところを一時救助できる。
 それが本当の目的ではないのだろうか?

 すでにシャドーバンキング、理財商品、地方政府債務は合計で1000兆円に達しており、このうちおよそ三割が年内償還である。
 2012年に預金準備率を四回引き下げ、それでも効果が薄いと見るやシャドーバンキングを黙認し、銀行系金融機関に理財商品と積極的に販売させて急場を凌がせてきた。

 ところがGDP成長率は低まりばかり、不動産バブルが瓦解していることはいまや世界の常識であり、それでも尚、中国の経済が破産を免れている。

いったい何故だろう?
 
 第一に外国からの直接投資がつづいていることだ。
 日本は対中投資を48%も激減させ、欧米も撤退するところが増えたが、ドイツと英国、韓国などは逆に対中投資を増やしているからだ。

 第二に米国のFATCAの影響である。
 タックスヘブンにも監査が入り、脱税あるいは不正送金がテロリスト対策として摘発の対象となり、あるいは資産凍結、あるいは課税が強化されるため、ケイマン、スイス、バミューダの各タックスヘブンから、ミステリアスなカネの撤退が始まっている。中国から逃げ出して、一時的にタックスヘブンに隠匿されてきたカネが昨今、うなりを上げて中国へ環流しているからである。


 ▼無謀な投資をまたやらかすつもりらしい

 第三は近く打ち上げられる超大型、破天荒の都市化プロジェクト政策で、この期待から上海株式が冬にスイカが獲れるように、上昇しているのも、このことと関係がある。

 シンガポールの『ストレート・タイムズ』(2月4日付け)は李克強首相が準備中の経済再生化対策の目玉としての都市化に合計300兆円が投じられると報じた。
人民日報、新華社には、まだこの発表がないが、合計14の省、とくに福建省に3兆元、四川省、河北省にそれぞれ2兆9000億元、河南省に1兆5000億元、湖南省に1兆元が投じられるという。
 リーマンショック直後に投じられた四兆元(57兆円)て世界経済を牽引した中国は、この無謀きわまりない破天荒投資によって全土に幽霊屋敷を造った悪例には目をつむり、またも景気を維持するために天文学的な投資を繰り返そうというのである。
以上

 この記事を読んで、戦前の台湾銀行(台湾における中央銀行だが商業銀行でもあった)の機関銀行化を思わせた。当時の大手商社だった鈴木商店に貸し込み過ぎて、後の経営危機で台湾銀行も共倒れになり、やがて昭和金融恐慌へと発展していった。特定の企業(ここでは太子党系企業)へ貸し出しを増やすのが狙い、と宮崎氏は指摘された。
 独立した中央銀行なら抑制がいる。中国は国家でなく、中国共産党王朝と言われるゆえんだろう。中央銀行はただ紙幣の印刷工場か。
 市場経済になったとはいえ、中国共産党独裁下の中央銀行だから党幹部の恣意的な経営に陥りやすい。倒産を表面化させないために行われた措置ならばこのしっぺ返しは大きい。
 経済発展の成果を人民に配分しているとはいえない。一部の幹部党員だけが私腹を肥やしているのを知っているから経済破綻即易姓革命になりかねない。
 中国に進出した日本企業は「毒を食らわば皿までも」の覚悟はあるのでしょう。伊藤忠の多額の投資も不況を表面化しないための一環だろうか。敵前逃亡と言われるのが嫌さに友好を続ける。灰汁が抜ければ美味しい投資だった、ということになるが、果たして。
 ドイツとイギリスはどんな勝算があって投資を続けるのか。背後はロスチャイルド家だろうか。今の中国では金が盛んに買われているらしい。金といえば亡国の通貨という。すぐそこに破綻が来ているような気がする。杞憂で終わって欲しい。