岡本吏郎著『会社にお金が残らない本当の理由』を読む2011/06/14

 新書版。フォレスト出版。2010.1.23発行。著者は1961年生まれで50歳。税理士、経営コンサルタントで活躍する気鋭の会計人。
 本書は2003年に同名で出版されて好評を得た。2004年度のビジネス部門で3位の売れ行きをゲット。
 会計をやる以上は儲かれば「お金が残る」はずなのに現実には残らないのでその解決策を税務専門の会計人の視点から展開された。
 「この本は私の処女作です」とまえがきとあとがきで強調しているからよほど思い入れがあるんでしょう。
 では表紙のキャッチから点検だ。
「94%の社長は知らない!合法的にお金を残す技術。
 この統計の根拠が不明。儲けている会社は6%程度と逆説的に読むのかな。
「93.7%の会社は10年以内に潰れる」
 御意。会社経営は経済の荒波を泳ぎ、乗り越えていく覚悟がいる。業容拡大とばかりに各地に支店、営業所の拠点を広げる。人件費、家賃、通信費などが膨らむ。経済の波が落ちたときにカネが続かなくなると撤退だ。撤退にもお金はかかる。
 代理店を探すとか、出張で間に合わすとか、少ない人間でやりくりする知恵が要る。
「7つのシステム」
 P28以降に解説されている。
1.収入
2.支出
3.借入れ
4.税制
5.決算書
6.価格
7.リスク
の七つ。これは主なもの。 
「4つの数字」
 P154以降に解説がある。
一人当たり付加価値
労働分配率
一人当たり経常利益
ROA(総資本経常利益率)又はCROA(総資本キャッシュフロー率)
「役員報酬はあくまでも合法的裏金」
 こんな客観的な解釈は中々出来がたい。この内の内部留保の積み上げに手をつけるといざというとき柔軟な対応ができない。
 金が残らないのは実力以上の使いすぎと断罪する。会社の金と自分が生活費に使える金を分けて公私混同の基準を考えることが大切という。
 P32には役員報酬はただの仮払い、仮受金とも言います。
 「中小企業は節税のために目一杯役員報酬をとって会社の利益を限りなくゼロにする。中略。会社の利益がゼロならば役員報酬から「内部留保」をしなくてはなりません」。
続けてみよう。
「役員報酬1000万円はサラリーマンの年収500万円程度なのです。ちょっと資金繰りが良くなるとベンツに乗るようでは、やってはいられません」。
商売の種銭(内部留保)に手をつけてはいけないのです。
まだまだ続きますがこれ以上は本書をお買いになって読まれるといいでしょう。
「裏帳簿のススメ」
 今となっては既知のこともあります。
 経営経験から経営哲学が生まれるものですが著者は会計人の立場から経営のあり方を説いています。
 会計学を学ぶとその教科書の最初には企業は永遠なり、と書かれているはず。実際には経営難で倒産する企業の多いこと。それは何故かと著者は考えたはずです。
 多くの企業を見てみて結果として金がない、入金した金はすべて自分の自由に使える金と錯覚する、儲かって預金しておいた金も自分の金と思って身の丈以上の消費に回す。そんな現実に気付かれた。
 確かに過去を振り返ると高利の金を借りているのに、はったりも必要と外車を乗り回し、女性秘書を2人も雇っていた会社があった。
 某経済団体会頭の御曹司、有名私大OBで人脈も華麗な経営者がいた。
 不動産ブームに乗って大儲けした。よせばいいのにビジネス街の中心に自社ビルを建てたが実は資金繰りは火の車であった。資金の固定化をなぜ検討しなかったのか。ライバル会社も松坂屋の隣に自社ビルを建てたがすぐに倒産してしまった。
 自社ビルはカネを生まない典型的な資産なのです。よってたかって課税の対象になるもの。よほどキャッシュフローのいい会社以外は見送りが賢明です。
目次を見て食指が動きますか。
第1章 システムを知らないからお金が残らない。
第2章 システムを知らなくてもどうにかなった理由
第3章 システムの正体を探る
第4章 数字はこうやって考える
第5章 システムの中をどう泳ぐか
終章 クリエイティブ・マイノリティ
 一読しておいて損はないでしょう。

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