村田裕之著『親が70歳を過ぎたら読む本』を読む2011/06/12

 副題:相続・認知症・老人ホーム・・・・について知っておくこと。
 ダイヤモンド社刊。2011.2.10発刊。
著者の村田氏がこの本を書いたきっかけは今ある高齢者を取り巻く本は専門書が多くて総合的な本は見つかりにくいという問題意識からでした。そこで以下の目次を見ても分かるように包括的に時系列的に起こりうる問題を整理しながら解説されたわけです。
 ちなみに著者は1987年大学を卒業とだけあるので推定46歳前後。40歳代50歳代の視点から書かれている。法律家、学者、評論家などではなくシニアビジネスのパイオニアの立場からの発言である。
目次を見てみる。
プロローグ もし、あなたの親に何かあったら、あなたの生活はどうなるか?
第Ⅰ部 親が70歳を過ぎたら元気なうちにやること
第一章 老人ホームの情報収集を行う
 客観的な情報は中々得にくい。実際に自分の目で確かめることを提言している。自分の足と目でなるだけ多く見て回ることで判断力を養うことになる。
第二章 相続トラブルを予防する
 この章だけで1冊の本になるだけの内容がある。実際多くの本が出版されている。週刊経済誌でも特集で取り上げることが多々ある。本書の出版元のダイヤモンド社から「週刊ダイヤモンド」がでているが時々このテーマに沿った特集が出ている。
 遺言書が必要なことを徹底して勧める姿勢である。
第三章 認知症による生活トラブルを予防する
 成年後見制度の利用を案内している。この分野の本も近年急速に増えてきたが実際の利用者はまだまだ少ないのが現状という。何分制度発足から10年経過したばかりだ。今後急速に利用が進むことは間違いない。 
第四章 身体が不自由になった場合に備える
第五章 終末期のトラブルを予防する
 尊厳死のついての章。
第Ⅱ部 親の体が不自由になってきたらやること
第六章 認知症かどうかチエックする
第七章 要介護認定を受けてもらう
第八章 介護施設を探す
第九章 財産管理契約等委任契約をスタートする
 弁護士以外はこの契約を結ぶことができない。つまり任意後見契約に入る前は法律行為の代理ができない。そこで著者は任意後見契約のようにきちんと法を整備して弁護士以外でも締結できるようにすることを提言している。同感である。
第十章 亡くなったときの連絡先を確認する
第Ⅲ部 親の判断能力が不十分になってきたらやること
 いよいよ任意後見、法定後見の段階に来た。
第十一章 任意後見契約をスタートする
 任意後見のハウツウである。
第十二章 法定後見制度を利用する
 これも制度の案内。
第Ⅳ部 もっと根本的な「トラブル予防策」
第十三章 認知症を予防する
 予防には学習、運動、生活習慣病を避けるのが良いそうだ。
 ここで学習というのは学習療法のこと。しかし何か頭を使うこと、と理解してもいいだろう。
 私の俳句会でもすぐにつぶれるかと思ったが粘り強く会合に出てこられる。皆さんの年齢は70歳前後である。てにおはの指導、季語、言葉の斡旋の提案、諸々の知識と経験の限りを尽くして全力投球で指導に当たっている。そして1年後の今は見違えるように良くなった。俳句は認知症の予防になると思う。
第十四章 筋力の衰えを予防する
 マイカー通勤から地下鉄通勤に切り替えて半年後の今は特に大腿筋の力が戻った気がする。山を歩いていても疲れにくくなった。常時歩くことが基本と思う。足から衰えるのは本当である。
第十五章 家族会議を開く
エピローグ 高齢期の親の問題を考えることは、私たち自身の近未来を考えること

 高齢社会とは大変な社会だった。皆が長寿を祝い、励ましあう社会ではなかった。なるだけ自力で生きてそれでも長生きしてしまってかつ他力が必要になれば様々なサービスを利用することになる。
 本書に欠けているものがあるとするともっと多様な行政のサービス(取り組み)の紹介ではないか。国は急速に進んだ高齢社会に取り組んでおる。
    http://www8.cao.go.jp/kourei/index.html
 高齢者宅を訪問する民生委員の活躍、新聞配達者の気遣い、宅配給食サービス・・・と考えていくと本書の内容はホンの一面だけの把握に過ぎないと分かる。
 高齢社会ではビジネスが前面に出てしまうとトラブルの元である。逆に目的を隠して親切心を出して高齢者の心に食い入る商法もある。倫理が大切であろう。
 地味ながら社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士などの活躍も紹介するといいだろう。知らされて初めて理解できることが余りにも多い。

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