岡本吏郎著『あなたの会社にお金を残す岡本式戦略帳簿のススメ』を読む2011/06/16

2004年アスコムから刊行された『あなたの会社にお金が残る裏帳簿のススメ』を2010年5月25日、『あなたの会社にお金が残す 岡本式「戦略帳簿のススメ」』と改題してソフトバンク文庫から出版された。
 気になる箇所を拾い読みしてみる。
 著者は制度でがんじがらめにされた役に立たない帳簿を形式帳簿と呼び、ほんとうに役に立つ自分のための帳簿を戦略帳簿と呼ぶ。

 形式帳簿とは税務会計で作成された決算書のこと。これを役に立たないという。稲盛和夫氏の著作にも減価償却の項で独自の考えを通して処理する必要性を説く文があった。
 
 この国の税制は基本的に取りやすいところから取る。税務会計では耐用年数を長くして資産計上に誘導している。そうすれば黒字になり、取りやすくなる。納税者の方も目一杯経費で落とせる支出はないか神経を尖らせる。

 本来は「ほんとうの決算書」と「税務署用の決算書」を作らなくてはいけない。アメリカでは2種類作られている。

 しかし、会計事務所が税法に基づいた決算書を作ってしまっているのだ。P39に図示している。銀行は税務署用の決算書で融資を決め、会計事務所は税法に基づいた決算書を作っている現実が決算書を骨抜きにした。

 P40から以降にはレストランの例を示すが『実学 経営と会計』(日経ビジネス文庫)の稲盛会計学でも法定耐用年数によらず、設備の物理的経済的寿命から判断して自主耐用年数を決めて償却を行うことにしたそうです。

 会計事務所はその「税金を計算するための数字」を耐用年数に使って決算書を作っているのである。それは面倒くさいから。もし、商法どおりに決算書を作っていたら会計事務所の仕事が倍になってしまう。それはとても無理な話だ。そこで、税金の計算用書類をそのまま「決算書」としているわけである。この弊害は大きい。

 成功する会社はその弊害にいち早く気付いて手を打ってきたのだ。稲盛氏のように。この感想はP75にも書いてある。

 国の言いなりになっていると会社を弱らせかねない。経営者は数字に強くなり、自分の意思で経営することだ。疑問をもち、どんどん会計専門家に質問することだ。特に資産の減価償却、棚卸資産など経費化を遅らせる資産に注目すると経営の勘所が見える。

 かつて経営危機に陥っていた日産自動車にカルロス・ゴーンが乗り込んでやったことは徹底した資産売却だったことを思い出す。現金化して流動性を取り戻すこと。ルノーの増資で借金も返済した。身軽になってからの業績アップは目覚しいほど。

 経営者の考え方一つである。それは企業の規模の大小、国境を問わない真理。

 しかし、もっとも気になったのは次の言葉
「経理の安易なアウトソースはハイリスク」は真実だ。良心的?な会計事務所は自計化を勧めるようだ。ある程度規模が大きくなれば経理マンを雇うのだ。そして事務作業を移す。経営者の参謀役が務まるといい。

 今は経理代行を業としている立場である。単純な事務員感覚では単価の安い同業者にとられてしまう。付加価値をもつこと。このヒトでなければ・・・というオンリーワンの経理代行業が理想。

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