「行政書士を生きるということ」-闘わなければ守れないものがある2010/10/10

 研修  副題:行政書士制度を取り巻く環境と課題
 講師:京都府行政書士会 名誉会長 宮原賢一
 於:岡崎市民会館         10/9(土)    13:30~16:30
 行政書士法の意義についての解説を諄々と説かれた。歴史は公事(くじ)の時代にまで遡って語られた。公事といえば愛知県知多半田市出身の女流作家・澤田ふじ子の「公事宿書留事件帳」シリーズを思い浮かべた。家にも1冊はあるはずだ。検索で調べると

 「公事宿とは、宿泊施設を備えた法律事務所のようなものですね。
江戸時代でも現代と同様、一般庶民にとって、訴訟手続きは面倒なものでした。だから公事宿に依頼して裁判にかけたんですね。また遠方からの客のために、宿泊施設を用意するのは当然のことでした。勿論賄い付きです。江戸は馬食町、大坂は谷町、そして澤田サンの殆どの小説の舞台である京都は、二条城南の大宮通り界隈に固まっていました。
 公事宿が扱うのは、主として<出入物(でいりもの)>つまり民事訴訟です。原告が、目安(訴状)で相手を訴え、町奉行が相手を白州に呼び出して返答書を提出させ、対決(口頭弁論)と糾(ただしーー審理)を重ねた結果、裁許(判決)を下す・・・こういう流れなんですね。これは素人には無理です。やはり司法に詳しい専門家に頼まなければなりません。
公事宿は必要なシステムでした。
 なお、<吟味物(ぎんみもの)>といって刑事訴訟事件もありましたが、これも現代同様、町奉行が捕らえて(実際にはby目明かしや同心等)断罪するものです。」

 というように今風にたとえれば弁護士事務所の中に宿泊設備があるようなもの(宮原先生)でした。しかしこれは行政書士の源流ではないと断定された。
 そして明治五年の代書人の時代へと移り変わる。時代が下るにつれて社会が複雑になり資格制度も細分化された。そこで業際問題が起きる。この論争についても詳細に述べられた。会社設立の際の定款では司法書士と業際問題が横たわり、マイカー購入では車庫証明で自動車業界と30年にわたる闘いがあったという。
 そして今も行政書士制度を廃止したいという財界、経済界からの要望が根強くあるという。つまり公官庁への許認可申請の代行権限=利権を握ったままでは自分たちが美味しい思いが出来ないというわけだ。行政書士制度を廃止して自由にやれるようになれば企業化された事務所が台頭して許認可を扱うことになる。
 だからしっかりしなさい、うかうかしていると仕事がなくなるよ、と警告されているのである。このことは逆の意味で弁護士の西田研志著『眠れる20兆円マーケット』-法務ビジネスという埋蔵金(幻冬舎)にも書いてあった。弁護士法72条は弁護士の排他的特権である。しかし多数の金額のわずかな事件はパラリーガル(補助職)に一任したいができない。弁護士に雇われている人=弁護士に準ずる特権があるわけではないのだ。
 行政書士の特権を守るために闘ってきた宮原氏、もはやこの(特権があるために)窮屈な弁護士の立場から飛び出したい、と書く西田氏は正反対のご意見である。
 この機会にもう一度精読しておきたい。

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