中国の反日暴動その後?2012/10/17

WEB版産経新聞から。
「社会不満の解決能力失い“反日”頼み 中国共産党体制そのものが投資リスクに」
「中国の反日暴力デモはひとまず下火になったが、対中戦略を見直す日本企業経営者は多いだろう。その際、基本的な認識として持つべきは、中国共産党が投資リスクそのものに転化してしまった点である。共産党の首脳陣が誰であろうともはや日本企業の味方ではありえない。(フジサンケイビジネスアイ)

 日本企業の対中進出は1970年代末に本格的に始まった。大手メーカー、商社、金融、流通業など主要企業、日本経団連など財界のトップたちはひんぱんに北京の共産党中央の幹部や首脳と会合を持ち、信頼関係の構築に努めてきた。部品、材料加工下請けなど中小企業経営者たちも広東省や江蘇省など各地方の党幹部と接触して合弁相手や立地先を選定してきた。

 現地法人には董事長と呼ばれる経営首脳とは別に、この法人の共産党委員会書記のポストを用意して報酬を払う。この書記が「工会」と呼ばれる労働組合を相手に低賃金をのませ、労務上のトラブルを水面下で処理する。共産党組織は党総書記(現在は胡錦濤氏)を頂点にした中央政治局常務委員(9人)が最高意思決定機関であり、各委員につながる人脈が全国に配置されている。このピラミッド型システムが各地での日本企業の投資をサポートする中で、日本企業は電機も自動車も大手から末端下請けにいたるまで安心して対中投資、生産、販売に励んできた。

 ところが、数年前からこのシステムはほころびが目立ってきた。農村部出身の労働者が待遇改善や賃上げを要求し、労働争議が頻発するようになったのだ。工会は影響力を失った。背景には貧富の格差の拡大があり、不信感がこれ以上広がらないよう、党中央や地方の党幹部も労働者大衆の不満を押さえつけられない。権力者がそうなら民衆はつけあがるのが中国社会の常である。労働者側の要求はエスカレートしトラブルが慢性化する。

 そこに起きたのが沖縄県尖閣諸島の国有化である。党中央は「愛国無罪」の旗を振った。すると各地の共産党幹部が競うように「日の丸」への攻撃を始め、「井戸を掘った」松下の工場を含め、日系の工場や店舗への放火や略奪を放置した。対中投資リスクを軽減してきたはずの党システムは真逆の破壊装置に変化してしまった。

 格差拡大や鬱積する社会的な不満の解決能力を喪失した党中央が安易な反日ナショナリズム活用に走る。自身の政治的基盤が脆弱(ぜいじゃく)な党官僚は保身のために反日で足並みをそろえる。良識派は沈黙の日々だ。さりとて、日本企業はただちに撤退するわけにいかない。莫大(ばくだい)な清算費用を突きつけられ、公正な裁判も受けられない。
ところが、数年前からこのシステムはほころびが目立ってきた。農村部出身の労働者が待遇改善や賃上げを要求し、労働争議が頻発するようになったのだ。工会は影響力を失った。背景には貧富の格差の拡大があり、不信感がこれ以上広がらないよう、党中央や地方の党幹部も労働者大衆の不満を押さえつけられない。権力者がそうなら民衆はつけあがるのが中国社会の常である。労働者側の要求はエスカレートしトラブルが慢性化する。

 そこに起きたのが沖縄県尖閣諸島の国有化である。党中央は「愛国無罪」の旗を振った。すると各地の共産党幹部が競うように「日の丸」への攻撃を始め、「井戸を掘った」松下の工場を含め、日系の工場や店舗への放火や略奪を放置した。対中投資リスクを軽減してきたはずの党システムは真逆の破壊装置に変化してしまった。

 格差拡大や鬱積する社会的な不満の解決能力を喪失した党中央が安易な反日ナショナリズム活用に走る。自身の政治的基盤が脆弱(ぜいじゃく)な党官僚は保身のために反日で足並みをそろえる。良識派は沈黙の日々だ。さりとて、日本企業はただちに撤退するわけにいかない。莫大(ばくだい)な清算費用を突きつけられ、公正な裁判も受けられない。

日本政府は企業任せにせずに、今回の破壊や休業に伴う賠償請求や日本人の生命・財産の安全確保を北京に対し厳しく迫るべきだ。このまま何も行動を起こさないなら、政府の資格はない。(産経新聞編集委員 田村秀男)」

引用は以上で終わる。もっとも新鮮な中国事情である。

 後悔は先にたたず!
 中国に幻想を抱いて進出した日本の経営者の感想と思う。
 最近、たまたま書店で目にした黄文雄『日本支配を狙って自滅する 中国』(徳間書店 2010.11.30)を買った。今、起こっていることが仔細に解説してあるからだ。出版の日は何と2年前である。
 目に付くキャッチ、記事を書いておくと
P23
 自民党時代は結構人材がいた。政権担当の長い経験があるため、それなりに中国の意思を読むことができた。例えば、安倍政権成立当時、安倍首相は最初に中国を訪問した。それで多くの人が安倍首相も「中国重視」だと思ったが、じつは「共同声明にこんな文言を入れるんだったら、やらない」と主張するなど、相手の意図を読んで、なおかつそれをはねつける気骨があった。このことは産経新聞をのぞいて新聞報道はされていないが、中国の理不尽な要求に対しては国益を守る観点から表でも裏でもいろいろ手を回していた。靖国参拝にしても、民主党政権のようにはじめから「行きません」とは言わずに、いつでもカードを切れるように、含みを持たせていた。
 しかし、現在の民主党政権は、そうした外交上の駆け引きについて、あまりにも未熟であり、対中戦略を持っていない。
・・・今回の反日暴動で痛感した。石原都知事の寄付金を募っての、尖閣購入を中国への挑発とする見解もあるが、まったく反対である。民主党は左翼政権ゆえに中国から見れば、尻尾を振る子犬のごときもので御しやすい。石原都知事こそ中国側には一定の尊敬を得ている。
 モンゴル史、東洋史の岡田英弘氏の本に「指桑罵槐」という熟語があった。反日暴動を見ていると正にこれだと思った。表向き反日デモでありながら反政府デモだったのである。
P62
 だから中国からすれば、戦後の日本は圧力をかければ言いなりになる、という日本観を持っている。しかも、日本の左翼知識人やメディアがこぞって、中国に味方してくれるのだから、中国にとって非常にやりやすい環境になっているのだ。
 とくに首相の靖国参拝は、日本のメディアも中国に加担し、日本の首相が代わるごとに「靖国を参拝するか」と問い詰める有様である。
・・・安倍総裁が次期首相になれば是非靖国参拝を挙行していただきたい。中国人のメンツを知らない云々、という人もいるが日本人にもメンツはあるのである。
・・・事なかれ主義を排せよ、と著者は警告する。「うるさい」「カネを握らせて黙らせろ」とまあ、こんなことではなかったかな。しかし、中国人からはこれも計算づくということらしい。
 譲歩しても譲歩しても誠意がない。仲良くはなれないのである。
P78
・経済優先で国の誇りを売り渡した日本経済
・・・見出し
・中国経済は日本の救世主
・・・よく新聞で読んだフレーズだ
・中国しか日本経済のよりどころはない
・・・これもよく目にしたフレーズだった
・前略、中国経済は日本の生命線だと考えている言論人も少なくない
・・・新聞に煽られた感はある。断定的な言い方は説得力があるが、一面危ない話でもある。

・・・レーニンは共産主義は高度に発達した資本主義の次の段階云々という断片を記憶している。例としてアメリカや日本を挙げていた。ソ連も中国も高度に発達した資本主義国家ではない。現代中国に至っては日米などの外国から投資を受けて経済が発展してきた経緯がある。
 邱永漢(1924-2012)は中国人に共産主義は一番似合わない、といった。同時に勤勉な国民を多数必要とする資本主義も似合わないように思う。すると、商業国家であろうか。一筋縄ではいかない厄介な国なのである。

 黄文雄氏には今後も中国事情について、健筆を期待する。