将来の世界は唯だ石油戦(『油断大敵』否『油断国断』)2012/09/01

 表題は志賀重昂全集第六巻P320から。
 「大正十一年十一月三日、我れ南米アンデス山を超ゆるや、谿間々々の積める雪を掻き払つては土を掘くり、マッチを擦り新聞紙の反古に火を点じて、掘りたる土の上に燃しに燃し、やがて附近より水らしきものを小瓶に入れて行く者が幾人ともなく見た。何かと問ふと、石油を捜索するのであると答えた。
 海抜一萬余尺、雪のアンデスの谿間々々まで石油を捜索せんとするとは、西洋人の努力も然ることながら、此の世界は全く石油是れ力たるの時代となったことを明らかに予に訓へたのである。」
「将来の国際問題は、列強間の油田の争奪よりして発生すべきである。誰か云ひ初めけん。『油断大敵』と。否油が断ゆれば、大敵どころか、実に国が断ゆるのである。『油断国断』である。」
 「日本にして将来の世界に破れざらんことを期するには、主として石油の供給を豊富ならしむるに在る。即ち之を期するには国家は(一)日本国内の含油地層及び油性頁岩(シェール)に徹底調査を遂行すべき事、以下略」

・そして、志賀重昂の予言通り、1940年8月から、石油製品の対日輸出規制が始まり、1年後には石油の対日全面禁輸に至った。その5年後、大日本帝国は対米戦争に敗れ、ポツダム宣言受諾に至った。
・石油問題は依然として解決されたわけではない。それどころか益々重要性を帯びている。日本にとっては、原発の稼動で一時的に石油依存を軽減することにはなったが、2011.3.11の福島原発の事故で一旦、全国の原発を停止した。そのために原油、天然ガスの輸入が膨大となった。現在は一部原発が稼動し始めたが、多くの反対がある。
・最近の新聞でアメリカで頁岩の開発が盛んになっていると報じられた。
以下、ダイヤモンド・オンラインから。
「韓国の李明博大統領による竹島上陸や、香港の活動家グループによる尖閣諸島上陸が国会でも取り上げられ、国民の関心がよりいっそう高まっている竹島・尖閣問題。とくに尖閣諸島の周辺海底には大量のメタンハイドレート(天然ガス)が眠っていると推測されているため、根底には“資源獲得”の思惑があると見られている。もし、日本がここで資源開発できれば、天然ガスの輸入国から一気に輸出国に変わるくらいの劇的な出来事が生じるかもしれない。

実際、そんなダイナミックな変化を米国に起こしたのが「シェールガス革命」だ。そもそもシェールガスとは何なのか、そしてシェールガス関連にどんな注目銘柄があり、日本経済や原油相場にどのような影響を及ぼすのか、専門家に取材した。

米国で大量にシェールガスが採れるようになった理由
 シェールガスとは、地下百~数千メートルのところに横に長く延びる頁岩(けつがん=シェール)層の微細な割れ目に閉じ込められたガスのこと。これまで採掘は困難とされてきたが、技術の進歩によって商業生産が可能になった。従来からのガス田型ガスを「在来型ガス」というのに対して、シェールガスは「非在来型ガス」と呼ばれる。成分は多少異なるが、同じ天然ガスの仲間だ。

 在来型ガスは、溜まっている場所(ガス田)に地表から垂直に掘って採掘する。一箇所にガスが溜まっているため、採掘しやすい。

 一方シェールガスは、大量の水を使って水圧で頁岩層に割れ目をつくり、そこから出てくるガスを集める。2000年代に入ってから水平掘り・水圧破砕などの採掘に必要な技術が開発され、2005年から生産量が飛躍的に伸びた。

 その結果、米国のガス生産量は2005年から年率4%で増加している。ただ、大量の水を使うことから「水質汚染のリスクをはらんでいる」と指摘する声もある。

シェールガスの実用化で、世界の天然ガス供給量は倍増?
 天然ガスの消費大国である米国は、これまで世界で生産される天然ガスの約4分の1を使用していた。2006年時点では天然ガスの需要が今後も増加すると予想し、LNG(液化天然ガス)の輸入増を計画していたが、国内でシェールガスの大量生産が見込めるようになったため、2011年時点では輸入量見通しを大幅に下方修正している。

 エネルギー事情からみたグローバル経済の動向に詳しい宮前耕也・SMBC日興証券金融経済調査部エコノミストによると、「シェールガスの埋蔵量は米国を含む米州に最も多く、その量は調査機関によって数字が異なりますが、技術的に採掘可能な量として、少なくとも60年分はあるといわれています」。

 これは、中東に多い在来型ガスの埋蔵量(推定60年分)に匹敵する膨大な量だ。ちなみに、日本は地質年代が新しいため、シェールガスの商業生産は難しいとされている。」

 戦前、アメリカへの極端な資源依存が対米戦争へと駆立てたか?
WIKI「ABCD包囲網」から
「日本は石油の約8割をアメリカから輸入していたため、このうちのアメリカの石油輸出全面禁止が深刻となり、日本国内での石油貯蓄分も平時で3年弱、戦時で1年半といわれ、早期に開戦しないとこのままではジリ貧になると陸軍を中心に強硬論が台頭し始める事となった。これらの対日経済制裁の影響について、英国首相のウィンストン・チャーチルは、「日本は絶対に必要な石油供給を一気に断たれることになった」[11]。と論評している。

 依存したのは石油だけでなく金もあった。戦時中、アメリカの工作機械を購入するに「金=ゴールド)を船に積んで、現物で決済していたようだ。これでは勝てるわけがない。

 「^ エドワード・ミラー「日本経済を殲滅せよ」(新潮社、金子宣子訳、2010.7.23)。1933年3月6日の金輸出禁止令(金本位制離脱)および10日の大統領令によりすでに金塊の輸出は許可制となり、4月に入ってアメリカからの金輸出の許可申請が集中したためふたたび金輸出の禁止が声明(20日に行政命令を布告)されていた。
 横浜正金は為替決裁の中心をロンドンに移し、1939年の英仏対独宣戦布告により再びニューヨークに移した。
 アメリカに対してはつねに輸入超過であり金不足、一方でロンドンに切り替えて以降は為替収支は安定しロンドンに対しては輸出超の金超過の決裁状況であった。アメリカの金輸出禁止令以降むしろ日本政府は円ブロック内で金を買い集めて金塊を現送しなければならない状況であり、ニューヨークでの正金は1938年にはほとんど枯渇した。
 日銀は38年中に3億円相当の金塊を横浜正金に預入して外国為替基金を設立し、横浜正金は38年度中にアメリカへ金現送を完了し、39年10月26日にはすべて売却し米ドル55,920,174ドル54セントおよび英ポンド8,753,602ポンド1シリング2ペンスの預金として運用を始めた(換算合計96,939,490ドル相当)。「日本銀行百年史 第2章4.金・為替の統制と国際金融政策」[6]。なお1938年当時の日本政府の国庫歳出は80億8400万円。
#横浜正金は後の東京銀行、現在は三菱東京UFJ銀行。外国為替専門銀行。

 原発には様々な問題が山積している。しかし、もし石油を断たれたら、水力発電だけとなり、エネルギーが枯渇する。全知全能をもって飼いならす必要を感じる。
 事故を起こした福島原発は老朽していて休止中だったそうだ。それが当時の鳩山さんがとてつもない約束をしてしまったことが遠因にある。

あるブログから。
「鳩山元首相は、国民的な合意も無いまま勝手に国連で二酸化炭素25パーセントカットを約束し、その根拠として全発電量に占める原発の比率を50パーセントまで高めるとしていた。
 事故にあった福島第一原発の1・2号炉は本来なら使用期限を過ぎて地震当日には原子炉内に燃料がなかったはずだったが、民主党の政策により延長使用がなされていた。
 もし、1・2号機が廃止状態なら問題は3号機だけであり全作業員を3号機に集中させていたなら水素爆発も防げていたのではないかと思う。
 そして、今度は、「原発を止めても、火力発電所でまかなえる」とはお笑い種だ。「CO2の排出量を25%カットする」という公約はどこへ消えた。それとも、あれは、「単なるでまかせ」でしかないのか。」

 先覚者・志賀重昂が聞いたら嘆くだろう。否、厳しい叱責を受けるに違いない。今や日本国の存亡の時である。今度こそ正しい政治の流れにしなければならない。

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