名証二部「オリバー」で架空取引発覚?2012/11/01

WEB版朝日新聞から。
「家具大手オリバーの元部長、3億円の架空取引」
 「業務用家具製造・販売大手のオリバー(愛知県岡崎市)は30日、営業を担当していた50代の元部長が、複数の取引先との架空取引を計上していたと発表した。金額は約3億円にのぼるという。元部長とは連絡が取れなくなっており、背任などの疑いで刑事告訴をする可能性もあるという。

 架空取引は、取引先の指摘で9月に発覚した。社内で調査委員会を設け、元部長の関わった取引を調べたところ、売買の履歴がありながら製品の納入実績がない取引が、過去約半年の間に3億2100万円あったという。

 オリバーは今後、弁護士や公認会計士による外部の調査委員会を設け、元部長が取引のなかで不正に金銭を得ていたかどうかも含めて実態を調べるという。 」

 株式会社オリバーでは社長名で以下にお知らせを配信した。PDF版

「当社元従業員による不正行為に関するお知らせ」
 「このたび、誠に遺憾ではありますが、当社において、元従業員による不正行為が行われていたことが判明しました。本件発覚後、直ちに社内調査を開始し、社外の弁護士及び公認会計士等を交えながら事実関係の調査や原因の究明に取り組んでおりますが、現時点において判明している内容につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
 株主の皆様をはじめ関係者の皆様には多大なるご迷惑とご心配をお掛けすることになりましたことを、ここに深くお詫び申し上げます。今回の不正行為が行われた事実を厳粛に受け止め、全社をあげて再発防止策の徹底に取り組んでまいります。
                   記
1. 不正行為の判明した経緯と概要
 当社元従業員(元執行役員)が、複数の会社との間において、実体の無い取引の売上計上及び仕入計上を行っていたことが判明しました。本件につきましては、当社にとって売掛金の回収予定がある会社より、支払うべき金額以上の債権を有するとの指摘があり、かつ、その指摘のあった日より元従業員の所在が不明となったことから、当該取引に不審な点があるとの疑いを抱き、元従業員の関与する取引の状況を確認したところ、元従業員の供述は得られないものの、実体の無い取引があるものと判断しました。
 本日現在において、本件に関連すると思われる未決済の売掛金及び買掛金の概算額は、それぞれ268 百万円、53 百万円でありますが、これらの金額を含む当該不正取引の当期連結業績等への影響額については現在調査中であり、具体的な金額が判明次第、速やかにお知らせいたします。
2. 今後の対応について
 当社は、本件の発生をきわめて深刻な事態と受け止めており、当社代表取締役社長 大川博美を委員長とする社内調査委員会を設置いたしました。社内調査委員会は、本件の事実究明に向けて調査を行い、調査結果に基づく業績等への影響を精査するとともに、コンプライアンス体制の強化、見直しも進めてまいります。
 また、社内調査に対する公正中立な検証や、第三者による独自調査を行うために、弁護士、公認会計士等で構成される外部調査委員会を設置することといたしました。
 なお、役職員に関する経営責任及び管理責任につきましては、調査結果が判明次第速やかに処分を行う予定であります。
 現在、顧問弁護士とも対応を協議中でありますが、今後の調査の判明内容によっては、当該元従業員に対し刑事告訴等の措置を講じる可能性もあります。
 今回の不正行為の発生に関しまして、株主の皆様をはじめ関係者の皆様に多大なるご迷惑をお掛けすることとなり、重ねてお詫び申し上げます。
 今後、皆様からの信頼を取り戻すべく、事業活動の健全化に向けコンプライアンス体制の強化、見直しを最重要の施策と位置付け、取り組んでまいります。
                                  以上

 10/31付けの中日新聞朝刊では25面に3億円超 架空取引と大きく報じた。記事中では循環取引と発表したことを書いている。循環取引とは
http://www.mikiya.gr.jp/Circulation_dealings.html
にアクセス。御器谷法律事務所のHPから
「1. 循環取引とは、
 一般的には、複数の企業間において、合意ないし通謀のうえ、帳簿上で商品の売買やサービス等の業務委託や請負等をくり返し、実体のともなわない架空の売り上げを計上する取引のことを言います。
 帳簿上の伝票の操作だけで売上げを増加するものであり、売上げの実体をともなわないため不正の温床となるとの指摘があります。
 このような循環取引は、エンロン事件やIXIの経営破綻、加ト吉グループ等においてかつて問題化したことがありました。

2. 循環取引のねらい
 循環取引は、実体のともなわない売上の増加により、それを行う企業の業績を良く見せかけ、成長性を誇示しようとしたり、増資や融資に利用し、さらには上場に利用し、又、株価のつり上げ等のために悪用する事例も指摘されています。
 また、循環取引を利用して、企業の損失を覆い隠そうとする例も指摘されています。
 さらに、企業の決算対策や不良在庫の隠ぺい等のため、期末に在庫商品を通謀している企業に売買したこととし、期中に架空の売上を計上し、その後決算後に商品を買い戻し辻つまを合わせようとのやり方も、この循環取引の一種としてとらえることもあります。」

 約30年前、前勤務先で、当方は得意先の債権管理を任されていた。上司の営業社員Aが一人だけ、債権回収の報告書を出さない。度々、警告すると遅まきながら提出してくる。それでも度重なるので、ついに役員にも報告しておいた。
 役員は疑問を持ち、営業社員Aの担当する得意先に全部、債権の金額を問い合わせた。一社が合わないので問い詰めると1800万円の使い込みが発覚したのだった。
 B社の回収代金を着服した。C社の回収代金をB社分として報告し、C社の回収はD社の分で補填としていたのだが、着服が大きくなるにつれて、穴埋めが難しくなり、報告を遅らせることになったものと思う。これは循環取引ではないが、会社のカネの横領の手口の一つであることに違いない。
 さて、㈱オリバーは当事者が行方をくらましており、まだ詳細が明らかになっていない。調査中とのことだ。売上200億円の企業にとって3億円の穴は大きい。
 仕入も売上も架空で取引するには体裁(架空の受注伝票、売上伝票、売上先への請求書、出荷依頼票、納品書、検収書、発注伝票、仕入伝票、仕入れ検収、仕入れ先の請求書などと決裁印など)がいる。その体裁を潜り抜けたわけだからよほど巧みなのだろう。

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